連載自作小説 奇跡の降る夜9
- カテゴリ:自作小説
- 2012/01/20 13:29:52
「いんこな日々」-それがサイトのタイトルだった。それまで翔は「ひび」の意味をいろいろ想像していたのだ。泣いた心の傷?亀裂?まさか「日々」だとは想像もしていなかった。
サイトはタイトルどおり、「いんこな日々」を綴った「物語」であった。ある日、自暴自棄になった女の子がペットショップに売れ残っていたいんこに「もう、いんこになってしまいたい」とつぶやく所から始まっていた。そして言葉どおり「いんこ」のからだに人間の意識を持ったまま入ってしまった女の子はそのまま、誰か女性に買われ、そしていんことしての一生を体験して人間世界に戻ってくるーそういう話だ。
掲示板には物語と信じて疑わない読者の感想でにぎわっている。でも翔にはわかった。これは、あの「涼子」の実体験なのだ。すさまじい体験だったろうと思うと絶句する。しかし、このサイトと自分の接点がわからなかった。飼われた先の女性が私だったのだろうか?と一瞬思ったが、飼い主は彼氏がいたようだし、めでたく結婚していると書いてある。彼氏のいない私とはイメージが重ならない。
涼子と会ったのは牛丼屋だった。つまり、羽太郎の合図は、もう少し先なのだ。ペットショップが移転して牛丼屋になってからということだ。でも。翔は思う。羽太郎と再び接点が持てるなら、いつまでだって待てる。合図の場所はわかったのだから。ブックマークをしてパソコンを閉じると、喫茶店を出て、きなことチビの待つ家へと急いだ。「いんこな日々」には、飼い主が出て行ったあとのいんこの不安な心情が綴られていたからだ。
(つづく)
いやいや、素直に展開していきますですよ(^^;
トシraudさんを翻弄できるような度量が欲しいですw
やっぱSNSはお家が落ち着いて出来ますねw