Nicotto Town


まぷこのぶろぐ・・・か?


【野望】-1

 「「金瞳」の娘が現れた」
 親父が帰ってきて、硬い表情でそう言った。
 「へー。よかったじゃん。長年の苦労が実って。で、どの女が孕んだ子?」
 「馬鹿者。儂の支配下にある女が産んだ子ではない。無論、お前の、でもないがな」
 「ひでーなー。俺の好みと「彼」の好みが合わないからって、「無論」はないだろうに。じゃあ、ほかのお偉方が送り込んだ女の産んだ赤ん坊?」
 「現れたのは赤子ではない。成長した「娘」だ。いったいどこに隠れておったのか…」
 「へーえ。意外だねぇ。「彼」にそんな甲斐性があったとは。奥方一筋だと思ってたのに」
 「そういうわけで、お前の好みの女は、今後一切採用しないから、あまり自分の好みに偏った狩り方はしないように」
 「…へ?なんで?」
 「そりゃ、いくら「お役目」でも、自分の娘よりも若い女を抱こうとは思わんだろうからな、「彼」は。今でさえ、あまり若いのには難色を示すんだから」
 自分の娘より若いのはダメ、って。いくら俺が初ものが好きでも、女になっていないようなコドモには手を出したりしないぞ。
 「ちょっと。その「娘」って、いったい、何歳?」
 「今年十五になったばかりだそうだ。見た者の話では、大層美しい娘だとか」
 十五。なら、守備範囲内だ。だが…
 「そんなにでかい娘……いったいいつこしらえたんだ?」
 「そりゃあ…「学院」にいる頃だろう、逆算すると。そのころはまだ奥方と一緒になっていた訳でもないし」
 「なるほどー」
 俺も「学院」を狩場に加えてみようか。
 「まったく……予定が狂ったわ。あれでは当分の間、寵姫が必要だとは思わんだろうな、「彼」は」
 「じゃあ、今仕込んでるのは、どうする?」
 「…好きにしろ。お前好みに仕立てて自分の人形にするもよし、磨き上げて稼がせるもよし。長持ちしそうなら、子供を産ませるのだって許すぞ」

 俺が「幻獣」の力を使えるようになったのは、確か九歳の時。最初は何が起こったか解らず、ただただ恐ろしい事をしてしまった、と脅えるばかりだった。その事にすぐ気付いた兄貴が親父に報告し、親父はすぐ後始末に走った。
 叱られると思い、クローゼットに隠れていた俺を見つけた親父は、
 「叱ったりはしないが、やたらなところで使われると面倒だから」
 という理由で力の発動を抑えるやり方を教えてくれた。
 幻獣の力を使った「狩」のやり方を親父が実践して見せてくれたのは、十二の時。
 それから一月ほどで初めて自分で「狩」を実践することになった。初めてで緊張していたせいか、「捕まえ」はしたが、「仕留める」前に逃げられてしまった。
 見かねた親父が、自分の「仕留めた」獲物を使って、獲物の「仕留め方」を仕込むのにさらに半月。
 初めて自分で獲物を「仕留めた」ときは、天にも昇るような嬉しさだった。

 親父が狩った「獲物」のうち、特に上物を磨きたてて、どこかに連れていく、という事を始めたのは、お袋が死ぬ少し前からだったと思う。だからあれは…五歳か六歳の頃だ。ちなみに兄貴を産んだ女は兄貴が三歳になるまでもたなかったそうだ。
 兄貴の狩った獲物もつれて行くようになった頃、いったいどこへ連れていくのか、と尋ねたことがある。「時期が来たら教えてやる」その時親父はそう答えた。
 親父が自分のやっている事を教えてくれたのは、俺が「王立魔法学院」へ入る直前だった。
 親父は表向き「王宮付き魔法使い」として職を得ており、日常の様々な雑多な用をこなしているのは知っていたが、まさか狩った獲物を寵姫に仕立てていたとは、その時まで気付かなかった。…いや、気付かないふりをしていたのかもしれない。俺の獲物で最初に寵姫に上がったのは、「学院」に入るまで、特にお気に入りで、可愛がっていたやつだったからだ。

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