契約の龍(45)
- カテゴリ:自作小説
- 2009/05/30 01:20:30
「で、その龍が、抱えているものに向かって、「ユーサー」って呼びかけてたんだけど……」
「けど?」
「…それが、クレメンス大公のように思えて。…近くで見たわけじゃないから、確かだ、とは言えないんだけど…」
「それで、クレメンス大公はユーサーに似ているのかどうか、確認したくなった、と?」
「まあ、そういう事」
俺とクリスが研究員に目顔で問いかけると、
「大公殿下と、ユーサー、ですか?うーーん……」
と、唸ったきり、黙り込んでしまった。
クレメンス大公の髪の色は焦茶色で、強いて言えば、「赤みを帯びた黒」だ。だが「赤い」というなら、まだ国王やグロスター公の方が「赤」に近い。ユーサーの容貌が判らないのなら、似ているかどうかの判別は難しい。
「…わかりました。見つかる、という保証はできませんが、探してみましょう。他も当たってみます」
「お願いできますか?」
「ユーサーの容貌、ということであれば、私どもの業務の範疇ですから。大変そうだけど、やり甲斐は感じますね」
「…はあ…」
急に意欲を見せだした研究員の様子に、クリスがちょっとたじろぐ。
「私どもの仕事を「あったことを標本するだけのつまらない仕事」と評価する向きもありますが、たまぁーに、こう言ったことも舞い込んでくるんです。過去が現在と交差する、というか、過去が未来を照らし出す、というか…」
そこで、急に我に返った様子で、はにかんだような笑みを浮かべる。
「…あ。…ということで、大変そうではありますが、全然負担ではありませんので、お気づかいなく」
「………はあ……よろしくお願いします」
研究員さんの気持ちがよく解ったりしてw
ちょっと難解なお問い合わせには 燃えますwww