雨の妖精たち…つづき
- カテゴリ:日記
- 2011/12/25 21:40:50
何、いったい何があったの。あの二人、大丈夫なの)
ナオが慌てて窓辺に駆け寄ろうとしたとき
「あの~」
「すいませ~ん」
さっきまでの慌てっぷりとは打って変わって、妖精たちが、おそるおそるといった風で、窓から顔を出し、間延びした声で語りかけてきました。
「あははははははははははははは」
その様子が、あまりにもおかしくて、ナオはついに笑い出してしまいました。
「わ、いきなり笑い出した。大丈夫なの?この人間」
「悪い人じゃないみたいだし、ちょっと変なだけなんじゃない」
いつの間にそばに来たのか、妖精たちがナオを見上げてそんなことをいっています。
(失礼ね。変なのはあなた達の方でしょ)
そう思いながらも、なかなか笑いが収まらないナオでした。
やがて、ナオの笑いが収まると、妖精たちは、話し始めました。
「はあ~、やっぱり暖かいお部屋は良いわね~」
「それで、お話って?」
「あ~、この茶色くて暖かい水、甘くて美味しいわ~。ねえ、これって何?」
「それは紅茶よ。で、頼みたい事って?」
「わっ、何この白い泥。すごく美味しい」
「えっ、どれどれ。わー、本当だ~。」
「ねね、これって何なの?」
「それは、クリームって言うんだけど、何か言いたいことがあるんでしょ」
「この石、辛っ!良くこんなもの食べられるわね~」
「うわ~、こんなの食べるなんて、人間てへんなの~」
「それはお煎餅っ!良いから頼み事があるならさっさと言えっ!」
「こんな事くらいで怒らないでよ~。心が狭いな~」
「そうだ、そうだ~」
「あなた達ね~!」
あーだ、こーだ、と、とっても楽しそうです。
そんな大騒ぎの末に妖精たちが話したのは
「私達雨の妖精はね~、雪が降り始めると凍っちゃうの」
「そ、春になるまで凍ったままなんだよ~」
「そうなの?どうして?」
「そんなの知らないよ~」
「知らないけど、凍っちゃうと動けなくなるんだ~」
(自分達のことなのに?…でも、そんなものなのかもしれない)
「動けなくなるのは嫌なのよ」
「寒いしね~」
「それで雪が降り始める頃になると、暖かいところに移り住むことにしているの」
「ところが今年は雪になるのがいつもより早かったんだ~」
「半分は、あなたが休んでばかりいるからでしょ」
「でも、そのおかげで、こんな良い家が見つかったんだから良いじゃない」
「えっと、それってつまり…?」
「私達をここに住まわせて欲しいの」
(多分そう言うだろうとは思ったけど…)
「でも、あなた達って雨の妖精なんでしょ。お部屋に雨を降らせたりしない?」
「するわけ無いでしょ」
「濡れるのは嫌いだもんね~」
(雨の妖精なのに、やっぱり変だよね。でも…)
「うん、分かった。良いよ。ここにいても」
ナオがそう言うと、妖精たちは、嬉しそうに微笑んで
「ありがとう」
「ありがと~」
といって、ふわり、と浮き上がりました。
「春までよろしくね」
ナオは、妖精たちに微笑みかけました。
「何言ってるの。ずっとだよ」
「ずっとここで暮らすことにしたから~」
そう言い終わると、妖精たちは笑いながらナオの目の前をくるくると飛び回り
「よろしく」
「よろしくね~」
そう言いながら、すーっとその姿を消しました。
ナオは、しばらくの間、妖精たちの消えた空間を見つめていましたが、二人が現れることはありませんでした。
あの二人は、ナオの創り出した幻、だったのでしょうか。
(ここ何日か、根を詰めていたから、こんな幻を見るのかもしれない。少し休もう)
そう思い、少しだけ開いたままの窓辺へ行くと、いつの間にか、雨は雪に変わっていました。
(寒いはずだわ)
そっと窓を閉めたとき
「暖かいね~」
「幸せだね~」
そんな声が背中から聞こえたような気がしました。
おわり
「この「雨の精」のせいで、(w)ナオは一生「雨女」と呼ばれ続けました」
なんて 「オチ」は、無いですよね~^^
まだまだ直さなければならない部分はたくさんありますが、とりあえず載せてみました。
ちなみに、ナオという名前に特に意味はありません。