それは、遠い遠い昔のお話。
私が、高校１年生に入学した春のこと。
みんなの顔と名前が、まだまだ、一致しない頃、
放課後の教室で、同級生の女の子二人が、
帰り支度をする私の席の前に立った。

「ねえ、ねえ。けんじ君。（←実際は苗字）」
「うん？」
「けんじ君、彼女いるん？」
「えっ！？」
「Ｓさんがー。」と、離れた席に座っているＳさんに目をやりながら、
Ｓさんは、どぎまぎして、顔を真っ赤にしている。
その子は、つづけて話す。
「けんじ君と付き合いたいって、ゆーてるんよ。」
「えっ？」
と、云われても、私は、あなたたちのこともよく知らないし、
Ｓさんなんて、もーとぉ知らないし。あのー、まだ、５月なんですけど、、、
わかってます？！あまりに、とーとつすぎて、いったい何を云ってるのか、、、
さっぱり、わかりましぇん！
と、心の中の私は、饒舌である。
「いやぁ、あの、、、」
「じゃぁ。まずは、文通から、はじめよっか。ね、文通ならええでしょ。」
「いやぁ、あの、、、」
そんなこんなで、私の前には、無理やり文通用のノートが、置いていかれた。
で、なんで俺から書くの！？今時、文通って！文通って何！？意味わかんねー！
心の中の饒舌は止まらない。
しかし、どー心の中心で叫ぼうと
とんでもない出来事が、ほんの数分で、
私の身にふりかかってきた事実に変わりはないのだ。
その後、私は、同級生とはいえ、
なぜかよく知らない女の子Ｓさんと文通をしていた。

そして、７月になり、
みんなの顔と名前が、一致しはじめた頃、
Ｔさんという女の子が、放課後、私の前に立っていた。
この子は、Ｓちゃんとは違って積極的で、
私に、今度の日曜日、何処かに遊びに行かないかと
代理人も立てずに誘ってきたのだ。
しかし、しかしである。
なんと、その様子をＳさんが、家政婦のように一部始終を見ていたのである。
ＴＶドラマであれば、効果音が入るところである。

そして、別の放課後に、当然のごとく、あの付添人の二人が、やって来た。
もちろん、それは、
Ｓさんと付き合っておきながら、なぜ、他の子と話してるの？
と、いうお説教＆脅しである。
て、ゆーかー、文通してるだけで、俺はＳちゃんと付き合ってなんかないしー、
まだ、文通だって、当たり障りのない内容な訳でー、ふざけンじゃねーよ！
と、心の中は、相変わらず饒舌である。

彼女たちの長い長いお説教は続く。
その横で、Ｓさんは、しくしく、しくしく泣いている。
な、な、なんだ！？これ？俺、なんか、悪いことした！？勘弁してくれよー。
まったくー。　それって、泣くこと！？フザンケンジャネーーーヨーーー！

と、いいながら、過去の思い出をさりげなくこのブログにて、
自慢してることは、云うまでもない。