契約の龍(43)
- カテゴリ:自作小説
- 2009/05/28 00:28:47
「……ポチ?あれが?」
クリスが「ポチ」と呼ぶ――そしてセシリアがリンちゃんと呼ぶ――リンドブルムは、確かクリスの腕にとまれるサイズじゃなかったか?
「ちょっと頑張って恩返ししてほしいんだけど」
リンドブルムが中空で羽ばたきながら、甘えたような声で一声鳴く。…やっぱり「ポチ」なのか。
「結界の範囲が建物のちょっと外まであって…あれ以上近寄れないみたいなんだけど…ポチのとこまで跳べそう?」
クリスがこちらを見上げて言う。
「跳ぶ、って…」
足場が良ければ跳べない距離ではないが……あれに掴まれ、と?掴まっても、大丈夫なのか?掴まったとたん、消えたりはしないのか?
いくらか逡巡したが、体調のあまり良くなさそうなクリスが、わざわざ呼んでくれたのだから、と覚悟を決める。
「じゃあ、お言葉に甘えて、ちょっとお借りします」
下に落ちないよう、注意しながら、全身を外に出す。軽く膝を屈めて、窓枠を蹴る。
指先が一瞬翼に触れたが、掴んだのは空気だった。
失敗した、と思った次の瞬間、リンドブルムが回り込んで受け止めてくれた。
リンドブルムはいったん上昇し、ゆっくりはばたきながら着地した。
「けがはない?」
格子越しにクリスが声をかけてくる。
「おかげさまで。…ポチって、こんな大きさだったのか?」
「まあ、本来なら、ね。…ポチ、御苦労さま。セシリアにごほうびもらっといで。ハウス!」
リンドブルムが姿を消す。
「なんで普段からあのサイズじゃないんだ?」
「だから、力を摂られちゃったから、あのサイズを維持できないんだ。セシリアのおかげで大分回復してきたから、あのサイズになれた。だから、お礼を言うなら、セシリアにね。…それより、私をここから出してくれないかなあ?」
言われるまでもない。
地上に降りてからずっと呪陣を構成している構造物を探している。ようやく全体像がつかめたので、回路を遮断。それから、ドアの解錠に取り掛かる。単純な仕組みの錠で、魔法に対抗する措置も施していないので、解除にさほど時間はかからなかった。
「お待たせ」
「ちょっと時間がかかりすぎじゃないか?」
クリスの方も中でひと仕事していたようだ。上を見上げると、壊した窓が何かでふさがれている。
「ちょっと、待ち、くたびれた」
そう言って、こちらに凭れかかってくる。意識が途切れてしまったようだ。
急いでドアを閉め――元通り施錠するのを忘れず――クリスを抱えて本棟の方に戻る。
気が付いたら、43話!
これから、どなるんだろ?恋なんかも出てきちゃいそうだね。
読み応えありますね~^^
時間があるときにまとめ読みしか出来ないけれど
楽しみにしています☆