Nicotto Town


まぷこのぶろぐ・・・か?


契約の龍(43)

 「……ポチ?あれが?」
 クリスが「ポチ」と呼ぶ――そしてセシリアがリンちゃんと呼ぶ――リンドブルムは、確かクリスの腕にとまれるサイズじゃなかったか?
 「ちょっと頑張って恩返ししてほしいんだけど」
 リンドブルムが中空で羽ばたきながら、甘えたような声で一声鳴く。…やっぱり「ポチ」なのか。
 「結界の範囲が建物のちょっと外まであって…あれ以上近寄れないみたいなんだけど…ポチのとこまで跳べそう?」
 クリスがこちらを見上げて言う。
 「跳ぶ、って…」
 足場が良ければ跳べない距離ではないが……あれに掴まれ、と?掴まっても、大丈夫なのか?掴まったとたん、消えたりはしないのか?
 いくらか逡巡したが、体調のあまり良くなさそうなクリスが、わざわざ呼んでくれたのだから、と覚悟を決める。
 「じゃあ、お言葉に甘えて、ちょっとお借りします」
 下に落ちないよう、注意しながら、全身を外に出す。軽く膝を屈めて、窓枠を蹴る。
 指先が一瞬翼に触れたが、掴んだのは空気だった。
 失敗した、と思った次の瞬間、リンドブルムが回り込んで受け止めてくれた。
 リンドブルムはいったん上昇し、ゆっくりはばたきながら着地した。
 「けがはない?」
 格子越しにクリスが声をかけてくる。
 「おかげさまで。…ポチって、こんな大きさだったのか?」
 「まあ、本来なら、ね。…ポチ、御苦労さま。セシリアにごほうびもらっといで。ハウス!」
 リンドブルムが姿を消す。
 「なんで普段からあのサイズじゃないんだ?」
 「だから、力を摂られちゃったから、あのサイズを維持できないんだ。セシリアのおかげで大分回復してきたから、あのサイズになれた。だから、お礼を言うなら、セシリアにね。…それより、私をここから出してくれないかなあ?」
 言われるまでもない。
 地上に降りてからずっと呪陣を構成している構造物を探している。ようやく全体像がつかめたので、回路を遮断。それから、ドアの解錠に取り掛かる。単純な仕組みの錠で、魔法に対抗する措置も施していないので、解除にさほど時間はかからなかった。
 「お待たせ」
 「ちょっと時間がかかりすぎじゃないか?」
 クリスの方も中でひと仕事していたようだ。上を見上げると、壊した窓が何かでふさがれている。
 「ちょっと、待ち、くたびれた」
 そう言って、こちらに凭れかかってくる。意識が途切れてしまったようだ。
 急いでドアを閉め――元通り施錠するのを忘れず――クリスを抱えて本棟の方に戻る。

#日記広場:自作小説

アバター
2009/05/29 01:31
日中に、一気に読んだよ~
気が付いたら、43話!

これから、どなるんだろ?恋なんかも出てきちゃいそうだね。
アバター
2009/05/28 20:20
43話まで読了っと
読み応えありますね~^^
時間があるときにまとめ読みしか出来ないけれど
楽しみにしています☆



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