Nicotto Town


てらもっちの あれもっち、これもっち


コンボイのお腹のおへそ

ワイオミングのララミーでの出張中での話。(続き)

ある日、仕事場にいた業者の人が当日中に帰らないと
いけなくなったと申し出てきた。
雪がぱらつき始めていたので今日は止めたほうがいいと話したのだが
上司の指示も有るから今日中に帰ると言い張った。

 一旦、宿に戻り荷物を整理し、4WDで地元の空港に向かった。
雪は、強風とともに嵐の様相を帯び始めていた。
案の定、地元のララミー空港の飛行機の便は中止になっていた。

デンバー空港まで3.5時間で移動するコースというのがあるが、
嵐の中の移動は止めた方がいいといったが
絶対に帰ると言い張った。
(過酷な環境から逃げたかったらしい。気持ちはよく分かった。)

もう暗くなっていたがララミーからデンバーへのハイウェイにのった。
風が相当強い。雪も横殴り。道は凍結している。
その上に雪が積もっていて、タイヤの溝跡を走っている状態。
視界も相当悪い。
スピードを抑え走る。走っている車はほとんどいない。

途中の長い下り坂で、一台の普通車に追い抜かされた。
結構飛ばしている。追い抜かされる瞬間。白煙で何も見えなくなる。
その車は追い越し車線から走行車線に戻った。
少し車間を空けておく。

そしてバックミラーに高い位置のライトが映った。
全長20mのコンボイ(トレーラー)だ。
こえーなー。と思いながら走行車線でじっと待つ。
コンボイが追越車線を120km/hくらいで追い抜かしていく。
風の揺れをハンドルで押さえ込みながら
じっと通り過ぎるのを待つ。
なんで、こんなに飛ばすのかな。なんて思いながら。

追い越したあとは、もうもうとした粉雪の白煙で視界0m。

しばらくしたらコンボイの姿が左前方にだんだん見えてきた。
スピードを落とさず前の普通車を追い抜かそうとしている。

あ。 と思った瞬間に普通車が左右に揺れた。
コンボイの追い越しに気付かずに
あわててブレーキを踏んだらしい。

コントロールを失って、コンボイに接触した。

コンボイも左側に車線を外れる。

来るー。
と思った瞬間に。コンボイが横転した。

コンボイが真横になったまま、下り坂を滑っていく。
車線に対しても真横。そう、お腹を僕のほうにむけたまま。

ガ、ガガガーーー。

だんだん近づいてくるその黒いお腹。
僕は一生懸命、ポンピングブレーキをした。
迫り来るお腹。おへそ。

ポンビングブレーーーーーキ。滑らないように。滑らないように。
そして、ぶつかる直前で、少しづつハンドルを切って路側帯に逃げた。

まるでアクション映画の1シーンのようだった。

「ふー。助かりましたね。」
と隣の業者さんの顔を見ると、顔面蒼白。硬直していた。
といっても、僕自身もどんな顔になっていたか。

「助けにいきましょうか。ドライバーの人。」
と聞かれたので、
「いや、車からでないで、ちょっと待っててください。」
といって、4WDで路側帯から脱出してトレーラーの
前に回り込んで少し離れたところまで移動した。

前側から見ると普通車はトレーラーに押しつぶされていた。

タイヤがパンクしたので、吹雪の中でタイヤ交換をしながら、
警察を呼びその場で待機した。

しばらくしてから「どーん」と衝突音が響いた。
懸念した通り後続車がトレーラーにぶつかったらしい。

業者の人は、絶対に自動車から出ない覚悟を決めた。

しばらくすると街から警察の隊列がやって来て、
ドライバー、普通車の人は全滅という
ことを教えてくれた。
ぶつかった後続車の人は助かったらしい。

パンクを警察の人に直してもらい、僕たちはそのまま
デンバー空港に向かった。
業者の人はその日のうちに日本に帰ると心に決めていたので。
ドライバーはずっと僕だったけど。


日本では全国ニュースになりそうだけど、アメリカでは
地方紙1面程度のニュースでした。

 それにしても、こんな話をしていると、自分の人生を切り売りしている気分になってしまう。書いてくれ。と言われている訳じゃないし、自分から書いているんだけれどね。
 多分、とっておきのブログのネタを一つ失っているということが寂しいだけなんだと思う。
 ま、いいか。

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2011/10/17 20:02
りんごさん
 その業者の人とはアメリカではいろいろあったんだけど、
 日本に帰ってから、会議で一度会いました。
 一目見た時に、なんというか
 お互いの目を見つめあって、何も言えなくなって
 生き残ったもの同志の共感というか、戦友みたいな気分になりました。

 そうですね。自然を甘くみてはいけない。本当にそう思います。
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2011/10/17 19:56
ぴぴこさん
 そう、ターミネーターとかマッドマックスとかスピードの世界でした。
 あのコンボイの下部構造のパイプとかタンクみたいなのが、白い煙の中
 スローモーションのようにだんだん近づいてくる。。。。
 いまでも思い出せます。

 おかげさまで生き残っています。

 
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2011/10/17 19:49
ティリモさん
 コメントありがとうございます。
 あまり周りには話さないんですよね。こういう話は。
 でも初対面でも妙に親しくなった人とかに話して、面白がってもらうことはあります。

 ああ。最後の4行は要りませんね。自分の品格を下げてる。
 自慢げだし。。。でも悲しいかな。ある意味自慢であるし、これが僕の品性。

 まだ危険/希少体験ネタはあるので、品性下げながら小出しにしていきます。
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2011/10/16 20:35
業者の人、口には出さなかっただろうけど、自分はバカだって思ったでしょうねえ。
自然を甘く見てはいけない~。
アメリカなんかもう行くもんかとも思ったかな。
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2011/10/16 06:39
ん~~~~~~~><
ターミネーターのBGMが・・・・><聞こえてきた><
映画のワンシーン見たいですね><
二度読みしてしまった><
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2011/10/16 00:40
ブログにかいて終わりなんて勿体無いとしかいいいようのない凄いネタですね。
まるで映画のワンシーン。アメリカの風をありがとう。僕の心は書いてくれと言ってます。




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