契約の龍(26)
- カテゴリ:自作小説
- 2009/05/18 01:23:48
「叔父様、というと…グロスター大公のお子様がた、かしら?」
「はい。姉と兄はあちらの席ですが…」
上座の方に目をやると、なるほど前に座っている少年少女によく似た面立ちの、赤みがかった金髪の若い男性と、それよりやや若い女性が並んで座っているのが見える。確か名前は…「王室名鑑」に載っていたのは、「グロスター公」にを名乗ることになった長男のライオネルだけだった。残りの子は、年齢しか明らかにされておらず、上から、十八、十四、九歳だった、と思う。
「お父様が亡くなった時にいらしていたのなら、絶対覚えているはずだもの。こんな綺麗な方々」
少年の方も口を挟んでくる。方々、っていうと、俺も含まれるのか?
「まあ。お誉め戴いて、どうもありがとう。…実は私もよくは知らないのだけど、私の祖父が、若い頃大公の知り合いだったらしいの。そのあとうちは外国に移っていて、連絡が途絶えてしまったのね。で、私が今年、こちらの学校に入ったので、祖父から一度ご挨拶に伺うように言われていたのだけど…その前にこんなことになってしまったんですわ。…祖父の若い頃の話が伺えなくなってしまって、とても残念ですわ」
…などと、虚実を取り交ぜて滔々と騙るクリス。
「…で、こちらの方は?」
期待のまなざしが寄せられるが、あいにく出まかせの持ち合わせがない。
「この方の付添いです。本人のおっしゃる通り、外国の方なので、この国の事情がよくわからない、とおっしゃるので」
「将来をお約束とか、してらっしゃるの?」
…は?今の説明で、どうしてそういう想像力が働く?
「……どうしてそうお考えになるんです?」
「ただの付添、にしてはずいぶんと気安げにしてらしたし、…こんなお綺麗な方なら、求婚者の三人や五人、突然現れてもおかしくなさそうですもの」
…夢見る少女ってやつは…
「彼女の仕草が気安げに見えるのは、外国育ちだから、だと思いますよ。私も最初はずいぶんと面食らいましたが、もう、慣れてしまいました。…しかし、慣れ過ぎてしまった、と今反省しているところです」
クリスが一瞬、こちらを睨むのが視界をかすめたが、気付かなかったふりをする。
さしあたり、初期設定の線は決めたので、食事の間は少年少女に、設定に合った出まかせ話をする羽目になり……とても疲れた。
相関図を作っておこうかしら? ますます、楽しみ !(^^)!