■近代文藝之研究|時評|梁川、樗牛、時勢…(1)
- カテゴリ:その他
- 2011/10/12 23:59:40
■近代文藝之研究|時評|梁川、樗牛、時勢、新自我 (1)
梁川、樗牛、時勢、新自我
曩には高山樗牛蚤く世を去り、今はまた綱島梁川が蚤世した。兩家ともに不惑に滿たざるの齡を以て、等しく其の晩年に一種の心熱、たとへば樗牛熱、梁川熱ともいふが如きものを世に起こした人である。
想ふに梁川をして尚十年の命を長くせしめたら、彼れは如何に變化し行いたであらうか。言ふまでもなく彼れの感想は著しく賢實の色を帶びてゐる。燃え上つた〓[#「焔」の異字体]の常に動きゆらいで、光鋩あたりを射るものとは趣を異にする。彼れの光彩は、たとへば熱鐵の、打つに從つて火花を發するやうなものであらう。何處かに堅實といふ感が伴ふ。けれども矢張り灼熱した鐵の、赤いところは一體である。赤い、美しいそれで熱を有する。若しハルトマンが譬喩を假りるなら、文藝に加ふるに宗教を以つてした、否恐らくはなほ多分に文藝を有して、是れより漸く將に宗教を加ふること多からんとするの境に立つてゐたものではないか。吾人が梁川の遺業に對して最も思ふところは此れである。
--------------------
*註1:高山樗牛
明治時代の思想家、評論家。1871年(明治4年)~1902年(明治35年)。抱月とまったく同年同月同日の生まれ。
[参照URL]⇒http://100.yahoo.co.jp/detail/高山樗牛/
*註2:綱島梁川
明治時代の思想家、倫理学者。1873年(明治6年)~1907(明治40年)。
[参照URL]⇒http://100.yahoo.co.jp/detail/綱島梁川(つなじまりょうせん)/
*註3:樗牛熱、梁川熱・熱鐵・灼熱・熱を有する
「熱」の俗字体(か?)。「執」+「レンガ(レッカ)」。下記 URL の文字は作字したもの。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sakuji_netsu.jpg
・補足……「樗牛熱、梁川熱」の直前の「一種の心熱」の「熱」は当用漢字体が用いられている。
*註4:起こした
「起」の正字体。旁の「己」が「巳」。
*註5:尚十年
「尚」の旧字体。「ナオガシラ」は「小」。
*註6:著しく
「著」の正字体。(↓見本文字のクサカンムリが「十」+「十」なのが正字)
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tyo_arawasu.jpg
*註7:燃え上つた〓
「〓」は「焔」の異字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/en_honoo_2.jpg
*註8:光彩
「彩」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sai_irodori.jpg
*註9:文藝
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg
*註10:宗教
「教」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kyou_oshieru.jpg
*註11:多分に
「分」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hun_wakeru.jpg
*註12:境に立つて
「境」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kyou_sakai.jpg
*註13:遺業
「遺」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
--------------------
■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1
梅酒は古ければ古いほど美味しいんじゃ??? 何か変でしたか?母が古い梅酒つけてますが
別に変な味はしませんでしたよ^^ 不思議ですね^^