Nicotto Town


キラキラ集め報告所


フェイトブレイカー! 第一章10

「…姫様。アロウの手を離しなされ」
「あっ、ごめんなさい。…でももうすぐ会えなくなるでしょうから」
シルフィアの言葉に、ローザは名残惜しげにアロウの手を離した。
「『会えなくなる』?」
「ローザ様は、クルクローク家の一人。言わば王族じゃ。
 本来なら、余所者の平民がこうして一緒に話をする事もできんのじゃぞ」
アロウの問いに、シルフィアは表情を曇らせながら静かに答えた。
「えー、そうなのー。残念だなぁ」
焼き菓子を頬張っていたレーヴェは、残念そうにそう言った。
「…もう少し、時間はありますね?」
指を鳴らしハンカチを作り出して、額に浮かんでる汗を拭ったアロウは、
先程のローザの言葉が気になっていた。
「先程、貴方は仰ってましたね?
『己の生まれを呪っている』と。何故そんな事を?」
その問いに、ローザは一寸躊躇ったが、静かに語りだした。
「…私はずっとこの城の中で育ってきました。
 お父様やお母様、そして兄様達に婆や達に囲まれて-」
ローザはそこで一旦言葉を切って、シルフィアの方を向く。
老婆は無言で話を続けて良いと頷いた。
「小さい頃はそれが当たり前だと思ってました。
 しかし、何時の日か、この城での生活が窮屈に感じ-」
そして、窓の外-城の外に広がる町並みに目を移し、
「この城の外の暮らし-平民達の暮らしが眩しく、
 そして羨ましく感じるようになりました」
何処か物悲しげに言った後、ローザは再びアロウに目線を向ける。
「…最近は、お父様達が私の嫁ぎ先を話し出しています。
 私は好きでもない人と一緒になるなんて嫌なのに…」
「仕方なかろう。それが王族の女というものじゃからな」
話を終えて俯くローザに、シルフィアは慰めるように肩を叩いた。

「ローザ…様」
「ローザでいいと言った筈ですよ、アロウ」
貴方の悲しげな顔は見たくない。
そう思って声をかけたアロウに対し、
それでもローザは悲しみを内に秘めた、力ない笑みを返した。
「…」
部屋の空気がどんよりと重くなる。
その時だった。
「あっ、そうだ!アロウ、“満月の王”をやっつけるために来たんだよね?」
「あ、えっと…そうだけど」
元気なレーヴェの言葉に、アロウは戸惑いながらも答えた。
「僕知ってるよ!吸血鬼ってとっても怖くて強い怪物なんだよね。
 その“満月の王”をやっつけたら、きっと皆、アロウの事を認めてくれるよ!」
「と、突然何を言い出すの?レーヴェ」
「…いや、確かにレーヴェの言う通りかもしれぬな」
突拍子もない事を言う弟を前におろおろするローゼを尻目に、
シルフィアはウンウンと何度も頷いた。
「その“満月の王”とやらが何か大きな事を仕出かそうとして、
 それをアロウが阻止したとしたら…。
 あの石頭だけでなく、両陛下も納得するじゃろう」
「い、一体何の話を…」
一人で勝手に盛り上がるシルフィアに、アロウだけでなく、ローゼも戸惑った。
「…そうじゃな。可能性は確かに低い。
 だがほんの僅かでも望みがあるならそれに賭けてみる。
 その為にお主はここに来たのじゃろ?」
真摯な表情に戻って老婆はアロウに問うた。
「ええ」
アロウは真顔で頷いた。
「ならローゼよ、彼に賭けてみようじゃないか?
 彼ならもしかしたら…」
シルフィアは敢えてそこで話を切った。

その時。
何処からか、時刻を告げる鐘の音が鳴り響いた。
「残念ながらもう時間のようじゃな」
というシルフィアの言葉とともに、扉の向こうからノックの音が聞こえる。
「ローゼ様、レーヴェ様。両陛下がお呼びです」
甲冑の金属が重ねる音と共に、男性の声が続いて聞こえた。
「…しばしお待ちを」
ローゼはそう言って部屋の一角にある衣装箱へ歩み寄る。
戻ってきた時、彼女に手には紫水晶の首飾りが握られていた。
「これを私だと思って身に付けてください」
ローゼはアロウにそれを手渡した後、レーヴェを連れて部屋の外へ出た。

「シルフィア様。アロウと共に我々に続いてください」
残った騎士達の一人が後に続くよう促した。
「さて。行こうかの」
「待ってください」
再び指を鳴らし、包み紙を作ったアロウはシルフィアに耳打ちした。
「この余ってる焼き菓子、持って帰っても良いですか?」
「もちろんじゃよ」
その言葉にいそいそと焼き菓子を包むアロウの姿を、
老婆は嬉しそうに見つめ、そして思った。
(あの子は勿論、ローザもあの子を好んでおるじゃろう)
「…お待たせしました」
「うむ。では行こう」
名残惜しげに首飾りを見つめ、そして身に付けた彼に、
(道は険しいじゃろうが…私ゃ信じておるよ。
 アロウは必ずその道を切り開くと)
シルフィアはアロウに自分の思いを伝えるようにそっと腰を叩く。
アロウは少し首を傾げつつも、
この老婆が自分を気遣ってくれているのを感じ取った。
やがてアロウは城を離れ、館へと帰っていった-。


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2011/10/11 06:19
お~(●^ω^●)は~(●^ω^●)よ~☆★

はぁ・・・よんじゃった^^
いいないいなぁ
今回はほんわか~だったぁ
思わずアロウにファイト♪。゜+.o((◕ฺ∀ ◕✿ฺ))o。゜+.♪ファイト♪てww

サーティーンさんもファイト♪。゜+.o((◕ฺ∀ ◕✿ฺ))o。゜+.♪ファイト♪



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