フェイトブレイカー! 第一章3
- カテゴリ:自作小説
- 2011/10/03 17:34:52
「もう少し質問を続ける」
ライブラが日記をめくりながらそう言った。
「まだ君には人間以上の能力があるようだが…まずは爪と翼だ」
「…こう、ですか?」
彼の質問に対し、事も無げにアロウは爪を伸ばし、背から翼を生やした。
「!?」
「もっとも、爪は鎌を握る邪魔になりますし、翼も空を飛ぶ為にしか生やしませんが-」
「わかった。ただし人前でそれは止めておくんだ。いいな?」
「師匠からも同じ事を言われました」
アロウは素直に従った。
「…そして、君は怪物を下僕にしているようだな」
「ああ、これですね」
再び問うライブラに、アロウは胸に付けてる五色のバッジを放り投げ、
パチンと右手を鳴らす。
すると煙と共に、五色の怪物-ジャックランタン-が現れた。
「…」
あまりの事に驚愕する導師を余所に、怪物たちはさも嬉しそうに部屋中を飛び回る。
「ヒャッホー。久々に表へ出られたー」
「「出られたー」」
南瓜の頭部に三角帽とマントを身に付けた怪物はそれぞれ自己紹介しだす。
「オイラは火使いだー」帽子のリボンとマントの裏地が赤色がそう言うと、
「オイラは氷使いー」青色が続けて名乗りだす。
「オイラは雷放つー」黄色がそう言うと、
「オラは地の力を操るー」緑色がケタケタと笑う。
「毒の事ならアタシにまかせてぇン」紫がそう言うと、
五匹の怪物はアロウの周りを回りだした。
「…どうも我々の知ってる、ジャックランタンとは微妙に違うようだが?」
陽気に踊っているそれらを見て、ライブラは首をかしげた。
「以前、師匠に内緒で遠出をした時に襲われたんです。
でも、返り討ちにしたらアッサリ懐かれて…」
アロウは当時を思い出したのか、若干照れ笑いを浮かべた。
「「こいつ強いー。だからオイラ達、こいつの仲間ー♪」」
五色の怪物は一斉にそう言うと、ライブラは事も無げにアロウに問うた。
「…だが、危険な存在である事に変わりはないようだ」
「ええ。だから普段はバッジに封じているんです」
アロウはそう言って指を再び鳴らそうとする。
「ま、待ってー。折角表に出られたのにー?」
赤南瓜が残念そうに抗議するが、
「君達の出番はまた今度だ」
アロウはそう言い切って、指を鳴らした。
「「アーレ~!」」
すると、五色の怪物は再びバッジの中に封じ込まれた。
「…そして、その犬が君の使い魔のようだな」
「ハイ、つい最近ですが。名はハウル」
アロウは、再び五色のバッジを身に付けつつ、
ソファの真横で丸くなってる黒犬の紹介をした。
「普通、犬を使い魔にする魔術師はいないのだが?」
「ええ。番犬代わりに召喚しただけです」
(-やはり嘘は言ってない)
ライブラの《嘘発見》の呪文の効果はまだ続いている。
アロウの言葉にそれが感じないのを見て、ライブラは内心驚きを隠せなかった。
「質問は以上だ。本来なら何処かの冒険者の宿を紹介するのだが…」
ライブラは一度言葉を切って、アロウの顔を見る。
「…」
アロウは、黙って話の続きを待っている。
「君にそれは少々危険だ。そこで君向きの屋敷がある。曰く付きの代物だがな…」
「曰く付き?」
溜息混じりに呟いたライブラに、アロウはおうむ返しで尋ねる。
「うむ。その屋敷にはある錬金術師が住んでいた。
君は錬金術を知っているかね?」
「ええ。非金属を金に変える術ですね。師匠には興味を持ってなかったようですが」
「…フェムトはそれ以上の事を目指していたからな。まぁ、それはそうとしてだ」
魔法の品の創造と錬金術。
どちらも現在では不可能-もっとも、後者はまだ可能性があるようだが-な技術。
それに挑む者達の苦悩を察しながらも、ライブラは話を戻す。
「もう50年も前の話だが…その錬金術師は、己の術を成功させつつあった。
だが実際は彼の弟子が師匠にトリックを仕掛けそう思わせたのだが」
「トリック?」
「彼の術とは、酸と非金属、そして生物の臓腑とを組み合わせて、
それを過熱し蒸発させると貴金属へと変えるというものだが、
弟子がある目的で、銀の削りかすを混ぜて師匠を騙したのだ」
「ある目的?」
「…その錬金術師には娘がいてな。弟子は彼女と師の財産とが目当てだった。
それを手に入れる為に、トリックを仕掛けて師匠のご機嫌を取り続けた-」
そこでライブラの表情が強張る。だが彼は話し続けた。
「待っていたのは最悪の結末だった。
錬金術師はトリックに気づかず、研究の為に己の娘に手をかけた。
当然彼は処刑され、弟子も『俺のせいで!』と発狂して自殺した」
「…」
「それ以来、何度かその屋敷に住んだ者がいたが、その全てが謎の怪死を遂げている。
お陰で今ではその屋敷は幽霊屋敷だの呪われし館だのと噂が立たれてな」
ライブラは溜息混じりにそう言って話を終えたあと、一つ付け加えた。
「国王達には私が話をつける。君はそこに住んでもらいたい」
「いいですよ」
そんな曰くつきの館に住むよう命じるよう勧める自分に気が引けるライブラに対し、
アロウはニコッと笑って答えた。
とってもおもしろ~~い
素直に読めてひきこまれてくよ♪
サーティーンさん
とってもすてきな文章です(#^^#)
小説カテゴリから来ました。
これだけを読んでも面白く、内容がわかり易い文章です。
文が繊細で、独特の雰囲気に引き込まれて凄く好きになりました。
ここでなんですが、小説stpします。