Nicotto Town


まぷこのぶろぐ・・・か?


「契約の龍」(19)

 「…何を言ってる?幻獣の守護を持つ王が、この国を」
 「幻獣側からしたら。ユーサーの血族が絶えれば、自由になれるんじゃないかなあ、と思って。普通、幻獣憑きが命を落とせば、その死体を媒介にして幻獣が復活できるんだよね。封じられる前より力が落ちるのは否めないけど」
 ………え?
 幻獣が、復活できる?
 そんな事……
 「…初耳だ」
 「…じゃあ、一般的な知識じゃないのかな。今の、聞かなかった事にして」
 聞かなかった事、って。
 「そんな知識、どこで手に入れた?」
 「………………うちで」
 「幻獣憑きの家系ではなかったはずだろう?アウレリス家は」
 「そうらしいね。でも、それは私が言う「うち」じゃない」
 「どういう意味だ?」
 「うちの「アウレリス」って家名は、祖父が祖母と結婚したため、そうなった。それ以前は別の名前だった」
 子が女しかいなかったので、家名が絶えたのか?
 「…なんて言う名前だ?」
 「知らない。祖父なら知っているかもね。でも、たとえ知っていたとしても、意味がない。またその前は違う名前だったから」
 「…その、幻獣についての知識は、母から娘へと伝えられる、ということか?」
 そういうものもあるのだろうか。
 もしかしたら、男の俺には分からないだけで、世間ではよくある事、なのだろうか。
 「……そんなとこ。だから、私はこの目立つ「証」にいなくなってもらいたい。祖母が亡くなるよりも前に」
 「全部伝える前に、母親が亡くなったから?」
 「そう」
 どうしてだろう。さっきから背筋に冷たいものを感じる。
 「…アレク?目が怖いよ?……もしかしたら、私のこと、人ではない何かじゃないか、って疑ってる?」
 「………実は、そうだ」
 クリスの顔が、少し曇る。
 「幻獣は「幻獣憑き」にはなれない。…私は人だよ?」
 「その常識も、ちょっと疑ってる。そういえば、人の姿をとれる幻獣もいたな、って思い出して」
 「……もしかしたら、…私が怖い?」
 怖いのか?
 この少女が?
 …おそらくは、そうなのだろう。
 だが、それは。
 この不安そうな目でこちらを見ている少女自体を恐れているのではなく。
 「……クリスがおっかないのは、最初からだな」
 努めて明るい声でそう言う。
 俺が恐れているのは、この少女を手に入れたいと思ってしまう、自分、だ。
 「おっかない、って。そりゃ、多少は威嚇してたかもしれないけど」
 ずいぶん不愛想だったが、あれは威嚇していたのか。
 「そういう意味ではなくて」
 上半身を乗り出して、顔を寄せる。
 さがろうとするクリスの頤を捕らえ、
 素早く、そっと唇に触れる。
 顔を離すと、目の前の緑の目が、大きく見開かれている。
 「これ以上のことをすると、こっちがけがを負いかねないから、ね」
 「……あの阿呆どもには、そこまでさえ、許したりしなかったけど。…試してみる?」
 「魅力的な申し出だけど、やめとこう。さっき教えたことが、その頭からこぼれおちてしまったら、元も子もない」
 「…そっか。そうだったね。あの馬鹿龍を何とかするのが、先だった。…でも」
 まだ馬鹿龍なんて言ってる。
 「さっきので、いくつか単語がこぼれおちたかもしれない。…戻してくれる?」

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