空を仰ぐ つづき2
- カテゴリ:自作小説
- 2011/09/17 15:37:26
「スコット、ニナ…。二人もしばらく休むといい。ボクたちはどちらにせよ、戦場へ戻るのだから…。」と、ボクはボクのそばにいる二人に呼びかけた。
「ああ、じゃあ、オレは少し町へ買出しに行ってくる。そうそう、リルルもどうだ?ここはフィルハーモニー家、発祥の地ガブリエル。奇跡の町として名高いパワースポットだ。なんなら案内するぜ」と、スコットは聞いてくる。
「いや、いい。静かに…戦場に戻るまでの間、静かに過ごしたいんだ。そうか…ここはあの奇跡の町か…。」
「そうか、わかった。じゃあな。また出かける時は頼むぜ」
「ああ、もちろんだ」
スコットの背中を見送り、となりにいるニナの方を見る。
「君はいかないのか?」
「ワタシは…あなたのそばにいてもいいですか?父の匂いのするあなたのそばに…」
「……ああ、かまわない。空でも見に行こう。そこに何かあるわけでもない。もしかしたら今日は曇り空かもしれない。それでもいい。気晴らしにはなるさ。何せ二人で散歩するのだから」
ニナはボクの腕を取り、寄り添ってきた。
「リルル…それともルゥ?」
「ルゥ・アプサラス…ハルモニア家の使用人。王子の執事をやっていました。王女様…以後お見知りおきを」
「……うん。そうね、あなたの中に父はいる。リルルを名乗ってくれてありがと。でも、ワタシは「ルゥ」と呼ぶわ」
「もう一つ呼び名がある…」
「まあ、たくさんあるのね…それはあの時、あなたが口ずさんでいた詩の中にあった名前よね…しと。どんな字を書くのかしら」
「死という文字と、使う…この二文字で。死使…。鬼の名前…。そう、ボクは鬼の自分を認めたくないから…君のお父さんの名を名乗りたいだけかもしれないし、君への情のためかもしれない。それはボクにもわからない。ボクはみっともない奴だ。でも…」
「でも?」
「それでもボクはたとえ世界を敵に回しても守りたい、救いたい…ヨシュアを!」
「…何だかヨシュアさんに嫉妬しちゃうわ」
「え?」
「ううん。こっちの話…。空を見に行くんでしょう。ワタシもそうしたい…。空を見上げれば父に会えるような気がするから」
「うん。うん、そうだね」
ボクは泣いていた。
ニナも泣いていた。
悲しみを受け止めるにはまだ全然足りないのだ。ボクたちは館を出て、手入れの行き届いた庭にある椅子に座って、空を仰いだ。
雲がボクたちの泣き顔を見て笑っているように感じた。
今はそれでいい。
ボクたちはまた戦場へ戻るのだから…。
うまいですねえ。
切ない場面なんだけど、ほわっとします。
私も昨日は泣きましたっ…