仕事も終盤の19時ころ。
唐突に、社長が、私に質問する。
「けんじ、犬は好きか？」
パソコンを見ながら、私はなんの思考もなしに答えてしまう。
「ええ、大好きすね！」

が、どうやらその答えは、正解ではなかった。
と、いうのも、
「あっ、そうか、、、」と、小さい声の社長。
「じゃ、俺帰るわ。」と、会社を出ていく。
パソコンから顔を上げ、
「お疲れ様ーす。」と、出ていく社長の背中を見ると
心なしか淋し気であった。

後日、社長の弟さんから、事実を聞かされる。
昔、娘さんにねだられ仕方なく犬を飼ったそうだ。
しかし、成人してしまった娘さんは、勤めにでるようになり、
全く世話をしなくなったので、
今では、その犬を社長が散歩させているというのだ。
犬にまったく興味ない社長が、犬の散歩を、、、

なんだーそうだったのか！
じゃ、正解は、
「興味ないすねー。」だったんだ。
そうしたら、きっと、
「おー。そうだろう。けんじも興味ないだ！
俺も興味ないんだよ！それがだよ、家の犬、
誰も面倒みないからさ。俺が、今から散歩させなきゃいけないだよ。
なー、酷い話だろー。まったく、しょうがねーよなー。」
と、あの時の社長は、私とこのような話の展開を期待して
愚痴を云いたかったのだ。

社長～！俺、犬なんて、ぜんぜん興味ないすぅ～！
（　↑　おいおい、いったい今更、何処で、叫んでんだ！）