Nicotto Town


おうむたんの毒舌日記とぼうぼうのぼやき


お話 「闇の家」その11(改訂版)

「私、ここにいたい。おとうさんとおかあさんといっしょに暮らしたい。影の練習やめてずっとこの家の中で暮らすのは?おかあさんと同じく闇に力を吸収してもらえばいいんじゃない?」
必死だった。でもおかあさんは頭を横に振った。
「また、あなたが黙って抜け出すかもしれないわよね?興味いっぱいの年頃ですもの。それにね」
おかあさんの声色が変わった。
「家にいても、状況は変わらない。あなたの夢でさえ闇が影響を受けているのよ。すでにもう闇が吸収できないほどの力があなたは持ってしまっているのよ」
反論できないお母さんの凛とした声ださらに続く。
「夢ですら自由に見ることができないーそんな状況にあなたが耐えられるわけがない。当たり前です。いつか感情は爆発し、闇の力を凌駕してしまう。あなたが闇の支配者になってしまうのは時間の問題だわ」
闇の支配者?私が?想像もつかなかった。でも動揺する心と雨音がが呼応する事実が否定しようなく自分の前にある。うなだれるしかなかった。
「・・・人間になっても遊びに来てもいい?」
私はすがるように懇願した。おかあさんは、またうなずいてくれなかった。
「記憶はなくなると思う。いえ、そうしなきゃいけない」
「おかあさんがスープの入ったコップを持ってきて、おとうさんがスープを飲んだコップを置く音が好きだった・・・」
とめたくても涙があふれて、とまらなかった。雨音が激しい。でも、私には雨を止めることができなかった。
おかあさんが
「泣きなさい。今日は泣きなさい。泣きながらいっしょに、いつもスープ飲みましょう、ね?」
私は泣きながらおかあさんに顔をうづめて、うなづいた。いつのまにか。おとうさんがそばに来ていた。
「おかあさんのおいしいスープ飲もうな」
おとうさん、おかあさん、大好きです!


陽だまりの中でおばあさんが、ウトウトと眠りかけていた。
「おかあさん、眠るなら家に入って休みましょう」
「いや、ここがいいんだよ。お前、もういいから自分の家に帰りなさい。夕食の準備もあるだろう」
「わかりました。また、明日きますよ。でも外にいるのはあと一時間が限度ですよ?」
「はいはい、怖い娘だこと」
「もう!おかあさんたら」
そう言いながらも、やはり娘は帰り支度をして、「あと三十分で家にはいってくださいよ」と念を押して帰っていった。
「うるさいのが帰ったわ」
このぐらいの時間の日差しがやわらかくて好きだった。

ふと足元を見たとき、彼女は満面の笑みになった。
「最期に思い出すことを許されたのね」
そして足元の自分の足元にできている影に言った。
「後任さんなのね、初めまして」
影は慌てふためいた。影の訓練を始めたばかりだったからだ。
「ちょっと影の形が違うわよ。光が突き刺さって痛いでしょ」
影は更に驚いた。人間に的確なアドバイスを受けるなんて、どういうことなのだろう?動揺はまた影の形を変形させ、光の矢が突き刺さった。
「痛っ」
思わず声をあげてしまった。人間に気づかれてしまった!おとうさんに怒られちゃう。
「大丈夫ですよ、おとうさんは怒らないわ」
おばあさんが優しく言った。人間がおとうさんを知ってるってどういうことなんだろう?
「建物の近くに移動しましょうね」
おばあさんはそういうと、よろよろと壁の近くのベンチになんとか移動した。おばあさんは目を細め、人間の時間は短いものねと笑った。影は不思議そうにおばあさんを見る。おばあさんが移動してくれたおかげで建物の影になることができた、人間の影よりはまだ難しくない。おばあさんは、まるでそれを知ってるようだった。
「もうすぐおとうさんが、迎えにくるわね。影の練習は難しい?」
影は困った。返事をするわけにいかない。おとうさんは気配を消すことに厳しいのにこのおばあさんにはばれてしまったようだ。どう対応していいのかわからない。早くおとうさんこないかなぁ。
「おとうさん、早くこないかなぁ」
同時に、自分と同じ言葉をおばあさんが口にした。驚いて建物の影なのに変形して光が突き刺さってしまった。
「まだまだ、いっぱい練習しなきゃね。おとうさん、早くこないかしら?話したいことがたくさんあるわ。ああ、でもおとうさんとおかあさんは全部知っているのよね・・・」
誰に話しかけてるのかと影はおろおろした。しばらくしておとうさんが、静かに横にたたずんでいるのに気付いた。
「ずっと、おかあさんと見守っていたよ」
驚いたことにおとうさんが、おばあさんに声をかけた。おばあさんは小さくうなずくと口元に笑みをうかべながら永遠の眠りに入っていった。
「約束どおり、最期まで見守ったぞ」
おとうさんは、もう動かないそのおばあさんに優しくつぶやいた。
闇があたりを覆いつくし、おとうさんは、小さな影に言った。
「おかあさんがスープを作って待っている。闇の「家」に帰ろうな」
そして付け加えた。
「ききたいことがいっぱいあるんだろう?その話もしなきゃいけないね」
小さな影はおとうさんの横でコクンとうなづいた。

おわり

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2011/09/02 14:00
>るぅさん
遊びに来てくれて嬉しいです^^。読んでくれて感謝です。
連載で読むのとはまた違った感想もあるかと思います
整合性がとれてない所もあったのではないでしょうか?^^;
書いてると、案外気付かないたちなもので(--;

>スイーツマンさん トシraudさん あんずさん
連載中、コメントほんと感謝です。読み手がいてくれて感想も書いて
くれて、それって、話を書き続ける原動力になってるなぁってしみじみ
思いました。
短編しか書けないと思ってましたが、連載の形でもうちょい長い話
書けるんだなと感じました。ほんと感謝です。

トシraudさん、紹介してくださって、ありがたいです。読んでもらえるって
幸せですね^^。
それと感想コメもいつもありがたく思っています。するどい指摘に「うっ」^^:
とうなっていたですw
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2011/09/02 12:07
急がせたから灰になっちゃいましたか?><
いいお話でした。
私の影は誰かな?^^
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2011/09/02 07:54
よかった!^^ サイドストーリーとかの予感がますます膨らみます^^ 何度読ませて頂いても、、、絵本のように絵が浮かぶのも良いですよね。
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2011/09/02 00:23
確認しました
お疲れ様です
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2011/09/01 23:10
こんばんは^^トシさんのブログからお邪魔しました。
闇の家族という設定にどうなるんだろうと引き込まれて一気に読んでしまいました。
切ないけれど優しいストーリーですね。とても良かったです(*^_^*)



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