お話 「闇の家」その11
- カテゴリ:自作小説
- 2011/09/01 15:06:32
「私、ここにいたい。おとうさんとおかあさんといっしょに暮らしたい。影の練習やめてずっとこの家の中で暮らすのは?おかあさんと同じく闇に力を吸収してもらえばいいんじゃない?」
必死だった。でもおかあさんは頭を横に振った。
「また、あなたが黙って抜け出すかもしれないわよね?興味いっぱいの年頃ですもの。それにね」
おかあさんの声色が変わった。
「家にいても、状況は変わらない。あなたの夢でさえ闇が影響を受けているのよ。すでにもう闇が吸収できないほどの力があなたは持ってしまっているのよ」
反論できないお母さんの凛とした声ださらに続く。
「夢ですら自由に見ることができないーそんな状況にあなたが耐えられるわけがない。当たり前です。いつか感情は爆発し、闇の力を凌駕してしまう。あなたが闇の支配者になってしまうのは時間の問題だわ」
闇の支配者?私が?想像もつかなかった。でも動揺する心と雨音がが呼応する事実が否定しようなく自分の前にある。うなだれるしかなかった。
「・・・人間になっても遊びに来てもいい?」
私はすがるように懇願した。おかあさんは、またうなずいてくれなかった。
「記憶はなくなると思う。いえ、そうしなきゃいけない」
「おかあさんがスープの入ったコップを持ってきて、おとうさんがスープを飲んだコップを置く音が好きだった・・・」
とめたくても涙があふれて、とまらなかった。雨音が激しい。でも、私には雨を止めることができなかった。
おかあさんが
「泣きなさい。今日は泣きなさい。泣きながらいっしょに、いつもスープ飲みましょう、ね?」
私は泣きながらおかあさんに顔をうづめて、うなづいた。いつのまにか。おとうさんがそばに来ていた。
「おかあさんのおいしいスープ飲もうな」
おとうさん、おかあさん、大好きです!
陽だまりの中でおばあさんが、ウトウトと眠りかけていた。
「おかあさん、眠るなら家に入って休みましょう」
「いや、ここがいいんだよ。お前、もういいから自分の家に帰りなさい。夕食の準備もあるだろう」
「わかりました。また、明日きますよ。でも外にいるのはあと一時間が限度ですよ?」
「はいはい、怖い娘だこと」
「もう!おかあさんたら」
そう言いながらも、やはり娘は帰り支度をして、「あと三十分で家にはいってくださいよ」と念を押して帰っていった。
「うるさいのが帰ったわ」
このぐらいの時間の日差しがやわらかくて好きだった。
ふと足元を見たとき、彼女は満面の笑みになった。
「最期に思い出すことを許されたのね」
そして足元の影に言った
「ちょっと形が違うわよ。光が突き刺さって痛いでしょ」
人間に声をかけられると思ってなかった影はびっくりしてまた変形して思わず
「痛っ」
声をあげてしまった。おとうさん、早く来ないかな?
「建物の近くに移動しましょうね」
おばあさんはそういうと、よろよろと壁の近くのベンチになんとか移動した。おばあさんは目を細め、人間の時間は短いものねと笑った。影は不思議そうにおばあさんを見る。おばあさんが移動してくれたおかげで建物の影になることができた、人間の影よりはまだ難しくない。おばあさんは、まるでそれを知ってるようだった。
「もうすぐおとうさんが、迎えにくるわね。影の練習は難しい?」
影は困った。返事をするわけにいかない。おとうさんは気配を消すことに厳しいのにこのおばあさんにはばれてしまったようだ。どう対応していいのかわからない。早くおとうさんこないかなぁ。
「おとうさん、早くこないかなぁ」
同時に、自分と同じ言葉をおばあさんが口にした。驚いて建物の影なのに変形して光が突き刺さってしまった。
「まだまだ、いっぱい練習しなきゃね。おとうさん、早くこないかしら?話したいことがたくさんあるわ。ああ、でもおとうさんとおかあさんは全部知っているのよね・・・」
誰に話しかけてるのかと影はおろおろした。しばらくしておとうさんが、静かに横にたたずんでいるのに気付いた。
「ずっと、おかあさんと見守っていたよ」
驚いたことにおとうさんが、おばあさんに声をかけた。おばあさんは小さくうなずくと永遠に目を閉じた。
闇があたりを覆いつくし、おとうさんは、小さな影に言った。
「おかあさんがスープを作って待っている。闇の「家」に帰ろうな」
おわり
書き終えて;今回強く感じたのは皆さんの感想のコメントが書く原動力になったということです。読んでる側にいるときには感じないのですが、実際、コメントもらうと、登場人物が動き出したいと言ってくるような感覚になりました。最後まで書けたのは、ほんとに、皆さんのおかげです。読んでくれたすべての方に感謝です。
おうむたん談 これってちゃんと風呂敷たためたビヨ?←おいっ(--〆
改訂版、書き直しました。皆さん、すみません
ともかく家族がまた一緒に暮らせて良かったですね
トシさんの文豪紹介ブログからお邪魔しました。
一気に全編楽しませていただきました。
とってもよかったです。
影の子供がどうなっちゃうんだろ~とやきもきしながら読み進めていました。
幸せな人生を送り最後にはまた影の世界へと戻っていったんですね。
おわりかたもよいですね~( ̄⋖⋗ ̄*)❤
↓ あっ…外伝もあるのかな? それもまた楽しみです^^
最後は、すごくシットリしたエンディングでしたね。なんか、書かれてなくても、影のお嬢ちゃんがすごく幸せな人生を送って、穏やかな気持ちで、影のおとうさんとおかあさんに帰っていく。
人間の娘さんは、ぼうぼうさんが演じてる、素のぼうぼうさんみたいな感じですw
さて、「闇の家・外伝、村人は見た!愛と憎悪の相関劇編」、すこし休憩したら、待ってるビヨ!おうむたんが怒るビヨ、オラの演じたキャラクター!!!ビヨ~~~っ・・・ってwww
鳥肌が立つってこういう時に使う言葉じゃないのかもしれないけど
最後、鳥肌たちました。( ̄- ̄゜)