Nicotto Town


おうむたんの毒舌日記とぼうぼうのぼやき


短編 「闇の家」その4

「影?」
言葉では知っていた。

「光と影」相対するもの。おかあさんが聴かせてくれるお話ではたいてい「影」は悪い象徴だった。
そういえば。
おかあさんが、「光と影」という時、いつも言葉につっかえていて、私は
「また、おかあさん、つっかえた」
と無邪気に笑っていたんだよな、思えばいろんなことがパズルのように、あるべき場所にみるみる収まっていく。雨の日、お仕事に行かないおとうさん。天気の話題が多かった家族の団欒・・・。

「私が影?」
どうも実感がわかない。するとそれに応えるようにおとうさんの声が頭に響いた。
「実感はいつまでもわいてこないぞ。我々に実体はないのだから」
実体がない私?ただ、おとうさんの大きな影が優しく包み込んでくれているようで、私は気持ちをなんとか落ち着かせることができた。
おとうさんが、のんびりとした声で言う。
「まさか、こんなに早く「家」から脱走するとは思わなかったぞ」
おとうさんが苦笑する。
「少しづつ、話していこうと思っていたんだがな」

夜になって「闇」が村を覆った。とても心地が良い。闇が私を建物からするりと引き離してくれた。自由になったのが嬉しかった。おとうさんが
「疲れただろう。家に帰ろうな」

お母さんはどうやって知ったのか、私がおとうさんと帰宅するのを知っていた。
「おとうさんの分身が村人に乗り移りながら、闇の家のおかあさんに知らせておいたのさ」
とおとうさん。
「おとうさん、分身なんてできるの?」
驚く私におとさんは苦笑した。
「実体のない我々に分身なんてわけないことなんだよ」
「今だって村の家の明かりの下で、ちょっとは影の仕事しているんだよ」
そう言いながら、
「最近は夜も明かりが多くて、昔より忙しいものなぁ」
とぶつぶつ不満を言った。
私に話さなくてはならないことが、一挙に片付いてしまったおとうさんは、すっかち気楽に不満を口に出した。
おかあさんが、
「これ以上、この子に詰め込むのはおやめになってくださいな。さ、あなたはすぐにお休みなさい」
今日はこれまで、といわんばかりにおかあさんがぴしゃりと言った。闇の中、今日が去っていった。

私が眠りについた頃、闇の家の前で昼間私を初めて影としてひきずった村人が、じっと闇の家の前で立ち尽くしていた。
(つづく)

短編といえなくなってきたような?(^^;

アバター
2011/08/25 10:35
影だったのですね!!主人公はっ!!
私、全然予想してませんでしたよ(-_-;)

影だとわかって
読んでて「?」と思ったところが凄く理解できました!!
つづきが気になります★
アバター
2011/08/24 20:49
影と闇が怖いモノから愛しげな姿に変わってる!!
なんか凄く素敵なお話しです!!
宮沢賢治の童話のように愛しくって愛らしい物語!!
凄く素敵です!!
闇が暖かくて優しい姿なのに感動してしまいました!
私の影も闇の家の子かもしんないと思うと嬉しいス♪
アバター
2011/08/24 19:47
なるほど
そういうオチでしたか
謎が解けました
アバター
2011/08/24 19:42
 光と影って言葉からジョニ・ミッチェルの歌を連想してしまいました。影法師の親子の暖かい家族の心の機微が良いですねぇ^^ 続き、どうなるんだろう!立ちすくんでる村人さんが、そうお話に絡むのかなぁ。長編童話?として楽しませて欲しいデス^^
アバター
2011/08/24 18:05
面白いよ~。(*ˇ◡ˇ*)♬♫



月別アーカイブ

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009

2008


Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.