短編 「闇の家」その4
- カテゴリ:自作小説
- 2011/08/24 15:19:27
「影?」
言葉では知っていた。
「光と影」相対するもの。おかあさんが聴かせてくれるお話ではたいてい「影」は悪い象徴だった。
そういえば。
おかあさんが、「光と影」という時、いつも言葉につっかえていて、私は
「また、おかあさん、つっかえた」
と無邪気に笑っていたんだよな、思えばいろんなことがパズルのように、あるべき場所にみるみる収まっていく。雨の日、お仕事に行かないおとうさん。天気の話題が多かった家族の団欒・・・。
「私が影?」
どうも実感がわかない。するとそれに応えるようにおとうさんの声が頭に響いた。
「実感はいつまでもわいてこないぞ。我々に実体はないのだから」
実体がない私?ただ、おとうさんの大きな影が優しく包み込んでくれているようで、私は気持ちをなんとか落ち着かせることができた。
おとうさんが、のんびりとした声で言う。
「まさか、こんなに早く「家」から脱走するとは思わなかったぞ」
おとうさんが苦笑する。
「少しづつ、話していこうと思っていたんだがな」
夜になって「闇」が村を覆った。とても心地が良い。闇が私を建物からするりと引き離してくれた。自由になったのが嬉しかった。おとうさんが
「疲れただろう。家に帰ろうな」
お母さんはどうやって知ったのか、私がおとうさんと帰宅するのを知っていた。
「おとうさんの分身が村人に乗り移りながら、闇の家のおかあさんに知らせておいたのさ」
とおとうさん。
「おとうさん、分身なんてできるの?」
驚く私におとさんは苦笑した。
「実体のない我々に分身なんてわけないことなんだよ」
「今だって村の家の明かりの下で、ちょっとは影の仕事しているんだよ」
そう言いながら、
「最近は夜も明かりが多くて、昔より忙しいものなぁ」
とぶつぶつ不満を言った。
私に話さなくてはならないことが、一挙に片付いてしまったおとうさんは、すっかち気楽に不満を口に出した。
おかあさんが、
「これ以上、この子に詰め込むのはおやめになってくださいな。さ、あなたはすぐにお休みなさい」
今日はこれまで、といわんばかりにおかあさんがぴしゃりと言った。闇の中、今日が去っていった。
私が眠りについた頃、闇の家の前で昼間私を初めて影としてひきずった村人が、じっと闇の家の前で立ち尽くしていた。
(つづく)
短編といえなくなってきたような?(^^;
私、全然予想してませんでしたよ(-_-;)
影だとわかって
読んでて「?」と思ったところが凄く理解できました!!
つづきが気になります★
なんか凄く素敵なお話しです!!
宮沢賢治の童話のように愛しくって愛らしい物語!!
凄く素敵です!!
闇が暖かくて優しい姿なのに感動してしまいました!
私の影も闇の家の子かもしんないと思うと嬉しいス♪
そういうオチでしたか
謎が解けました