昨年、彼女が前の学校で使ったという木馬の設計図を彼女は送ってもらい。

其の設計図にそって木の枠が作られた。
それにダンボールを貼って、茶色のペンキを塗って目をつけた。

中に２０人位ぎゅうぎゅうで入れる大きさである。
脇の木の枠を外側の人が持ち上げて運ぶ。

所がびくともしない。つまり外側の１０人の力が高２の男子１０人と女子１０人ではまるっきり違うのである。

其れすら解ってなかったのである。

しかも学校から市営運動場まで運ぶのである。
中に入れる人数はおのずと限りがある。更に外側の枠も持てる人の限りがある。

彼女は初めて現実にぶつかった。

で、どうするのかと見ていたら、なくだけである。
泣いても助けてくれる男子が居ない事に気がつかなくて、しばらくないていた。

周りはしらけて無視。

で、相変わらず衣装を作る人は衣装を作って、剣を作る人は剣を作って、ギリシャ軍の役の人は「ど～するの？」と言って、彼女を見ているだけ。

で、助けてくれる男子が居ないと気が付いたのか、担任（男）に相談に行った。

で、担任のアイデアで前の出口にもう一つ気の棒を通して、もち手を増やして、ギリシャ軍はくぐって出てくることに。

それでも持ち上がらない。
ダンボールをはがして、ケント紙にして軽量化を計ることに・・・。

そうだよね。その場にツツムさんが居れば布と言うアイディアを出してくれたのだろうけど、彼女は元学校の男子生徒が送ってきた設計図に拘ってあくまでも紙。

ケント紙にした分、敗れやすいから、もち手が少し足を引っ掛けると破けるわけ。
向こうに着いたときはボロボロで何が何だか解らない。
紙が風で剥がれ落ちちゃっているしね。

で、夏の運動服に腰に下が切れ目が入った布を巻いて、ダンボールに銀紙を貼り付けた剣を持って、彼女の演技指導が始まった。

審査員から、少し離れた所で、木馬から、ギリシャ軍が半分出てきて、私を含めた４人が居て、「ギリシャぐんだ～！」と後ろに数歩下がって逃げよう向きを変えた所を３人殺されて、一人が審査員の近くに居るトロイ軍に走って言いに行く。

其の時にギリシャぐんと木馬がまた少し運ばれて、審査員の見得る位置に木馬が最終的に置かれて残りの人数が更に加わって、審査員の目の前で戦闘が始まって、トロイ軍がやられて、ギリシャ軍が歓声を上げると言うのを、練習する。

切られた私達が残りの様子を見ていると彼女が来て、死体がその辺をうろちょろしていたら可笑しいので、殺されたら、見えないところにはけろと言って、はけるばしょを指示した。

終わったかどうかも見えないから解らないと言うと全部終わったら誰かを呼びによこすから其れまで其処に居ろと言う。

で、シミュレーションが行われて、死体置き場に私達３人は座って呼びに来るのをおしゃべりをしながら待った。

其処へ学年主任がやってきて、「お前達は其処で何をやっているのだ！」と顔を真っ赤にして怒鳴りだした。
すぐに殺された死体で此処に居るのだと言ったが、聞く耳を持たない。
特にお前と私をさして言った。「すぐに殺されないで、最後まで闘う気力を見せろ！」
３人でそうきめられたのでと言ったが、私は最後まで闘えと言われた。
此れだけ説明してもそういうのならと、切れた私は「では、先生が責任を持つのですね」と聞いた。３人にも証言者になってもらうと先生に言った。３人もやる気が無いと怒鳴られて顔を真っ赤にしている。好きで此の場所に居たわけじゃない。指示されていたと言ってもそれでもやる気を見せて戦えと学年主任は怒鳴るのである。

本番で呼びに来た。　スタンばって、私達４人が位置に付いた所で笛が鳴った。

木馬が近づいてきた。４人の前でギリシャ軍が半分だけ出てきた。
出てきたギリシャ軍皆殺しである。相手の剣は跳ね飛ばした。蹴飛ばしてから切りつけた。勿論転んで擦り傷である。他の３人も頭にきているからあっという間に４人で最初のギリシャ軍を殺して一人が余裕で「ギリシャ軍がきた～っ」と言いに走った。
残りが様子が変だと出てくるとぼこぼこに３人で殺した。
一人、一人と様子を見に出てくると殺した。
幾ら待っても木馬は審査員の側に来ない。人数が少なくて重たくてもてないのだ。

とうとう出てこなくて中を覗いたら、一人になった。
「出て殺しに行かないとギリシャ軍が勝っちゃうって歴史が変わるよ」と言うとまた、よわよわしいのが、一人残っちゃって・・・。
私達が見逃してやると彼女は走って審査員の前で待っていたギリシャ軍を一人でやっつけて、というか、勝手にギリシャ軍が死んで、トロイ軍の一人の英雄が出来た歴史に変わって、終わった。

監督役の彼女は審査員の横で唖然としている。
切られたギリシャ軍も呆然。一人の弱弱しいギリシャ兵にやられたトロイ軍も呆然。

私達は学年主任の言うとおりにしただけ。せめてもの良心で一人ギリシャ軍を残してやっただけ、感謝しろと余裕の表情。