■近代文藝之研究|研究|イブセン小傳(39)
- カテゴリ:その他
- 2011/06/30 23:00:46
■近代文藝之研究|研究|イブセン小傳 (五)(9)
此所には人みな胸を開き身を伸して闊歩し、思ふまゝを直言して憚らざるを得べし。而して此のわかく強健なる國民の中より二人の作家出で、アポロの笑みの前に月桂冠を額に戴きたり。其の一人ブョルンソンに關しては、英人は既によく知れり。彼れは祖國生活の幸福輕快なる一面を代表す。彼れは申分なき諾威文人なり。粗豪にして男らしく、文飾なく、譬へば若きチタンの肉的喜悦に充ちたるが如し。イブセンは之れに反して、此の山獄地方には意外の産物なり。模範的なる近代歐洲人なり、其の胸には懷疑充ち悲哀充ち不滿の望充ち、暗く深き人世の根源にまで覗き込まざれば已まず。一個の戯曲的諷刺家なり。
[#ここで字下げ終わり]
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*註1:此所には人みな
この部分は、前ページに引き続き抄訳箇所のため1字下げの表記。
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg
*註2:強健
「強」の俗字。旁が「口」+「虫」。
*註3:前に
「前」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen_mae.jpg
*註4:ブョルンソン
原本では「ブヨルンソン」とあるが、この箇所以前では「ブョルンソン」と表記されているため、その表記に統一した。
*註5:既に
「既」の正字体。「白」+「ヒ」+「旡」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sudeni.jpg
*註6:祖國
「祖」の旧字体。「示」+「且」。
*註7:幸福
「福」の旧字体。扁の「ネ」が「示」。
*註8:申分なき
「分」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hun_wakeru.jpg
*註9:文人・文飾
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg
「飾」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/syoku.jpg
*註10:肉的
「肉」の旧字体。「冂(=エンガマエ)」+「入」+「人」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/niku.jpg
*註11:喜悦
「悦」の旧字体。「リッシンベン」+「兌」。
*註12:産物
「産」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/san_umu.jpg
*註13:近代
「近」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註14:不滿の望
「望」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bou.jpg
*註15:覗き込まざれば
「込」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註16:戯曲
「戯」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tawamure.jpg
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■「イブセン小傳」の稿、以上で了。
■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1

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- 銀の堕天使@ゆう
- 2011/06/30 23:08
- 男らしくバターピーかぶるよ
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