■近代文藝之研究|研究|イブセン小傳(30)
- カテゴリ:その他
- 2011/06/21 00:02:48
■近代文藝之研究|研究|イブセン小傳 (四)(5)
イブセンの著作はウヰリアム[#「ヰ」は小文字]、アーチャー(W.Archer)氏、ゴッス氏、ハーフォード(Herford)氏等によつて專ら英譯せられてゐる。之れが劇場に上つたことについては、更に書くべきことも多いが、茲には略す。予の見たるは獨乙にて『人形の家』『ボークマン』『民人の敵』英國にて『海豪』等である。獨乙劇場に於ける『人形の家』に關しては巖谷小波氏が筆を執られるから、予は英國劇場に於ける『海豪』に關して其の梗概の條下に舞臺裝置の事を述べて置いた。尚ほ英國ではイブセンの劇は通常の興行では餘り多く出さなかつたと見える。ツリーが『民人の敵』を演じた外は、倫敦の劇場で普通の引きつづいた興行にイブセン劇を出した例は右のエレン、テリーの『海豪』を始めとする。マーテルリンク。ズーダーマン。ブョルンソンにまで手を出した、パトリック、カムベル夫人すら未だ一回もイブセンをば演ぜぬ。特殊の興行では、エリザベス、ロビンス嬢の『ロスマースホルム』『ヘッダ、ガブラー』『建築師』、チャールス、チャーリントンの『人形の家』等が主なるものであるといふ。
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*註1:イブセンの著作は
原本では文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。
「著」の正字体。(↓見本文字のクサカンムリが「十」+「十」なのが正字)
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tyo_arawasu.jpg
*註2:アーチャー
ウィリアム・アーチャー(William Archar/1856年〜1924年)のこと。イギリスの演劇評論家、劇作家。
*註3:ハーフォード
チャールズ・ハロルド・ヘルフォルト(Charles Harold Herford/1853年〜1931年)のこと。イギリスの文学者、評論家。シェークスピアと並び称されるベン・ジョンソン(ベンジャミン・ジョンソン)研究の大家。
*註4:更に
「更」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sara.jpg
*註5:茲には
「茲」の俗字体(か?)。Unicode にも文字種がないようなので作字してみた。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/koko.jpg
*註6:『ボークマン』
『ヨーン・ガブリエル・ボルクマン』のこと。1896年作、1897年初演。
*註7:『民人の敵』
『人民の敵』のこと。1882年作、1883年初演。英訳題は『An Enemy of the People』。
「敵」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/teki_kataki.jpg
*註8:海豪
「海」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kai_umi.jpg
*註9:梗概
「梗」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kou_husagu.jpg
「概」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/gai_oomune.jpg
*註10:述べて
「述」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/jyutsu.jpg
*註11:尚ほ
「尚」の旧字体。「ナオガシラ」は「小」。
*註12:通常・普通
「通」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註13:ツリー
ハーバート・ビアボム(or ビアボーム)・ツリー(Sir Herbert Beerbohm Tree/1853年〜1917年)のこと。イギリスの舞台俳優、劇場プロデューサー。
*註14:エレン、テリー
エレン・アリシア・テリー(Ellen Alicia Terry/1848年〜1928年)のこと。イギリスのアービング劇場の花形女優。
*註15:パトリック、カムベル夫人
ミセス・パトリック・キャンベル(Mrs. Patrick Campbell=芸名/1865年〜1940年)のこと。イギリスの舞台女優。通称「Mrs.Pat」。
*註16:エリザベス、ロビンス
エリザベス・ロビンズ(Elizabeth Robins/ 1862年〜1952年)のこと。イギリスの舞台女優。「C.E. Raimond」の筆名で小説やノンフィクションも書いた。
(コメント欄に註、つづく)
なんか。眠いね^^最近歳かな
*註17:『ロスマースホルム』
『ロスメルスホルム』のこと。1886年作、1887年初演。
*註18:『ヘッダ、ガブラー』
『ヘッダ・ガブラー』のこと。1890年作、1891年初演。
*註19:チャールス、チャーリントン
チャールズ・チャーリントン(Charles Charrington/1860年?〜1926年)のこと。イギリスの舞台俳優、演劇プロデューサー。舞台女優でイギリスで初めてノラを演じ、翻訳家でもあったジャネット・アチャーチの夫。
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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1