■近代文藝之研究|研究|イブセン小傳(19)
- カテゴリ:その他
- 2011/06/05 18:50:08
■近代文藝之研究|研究|イブセン小傳 (三)(9)
クリスチアニアにては、イブセンの頃は全く固陋の徒より免るゝの途なく、社會の頂より奧底まで此の種の輩を以て充たされたりき。また諾威人は常に熱烈なる黨派心を有し冷靜公平の判斷を文學史上の作品に下すこと能わず。例へばブョルンソンにはブョルンソンの黨與ありてそれらの人々はイブセンを敵とし之れを引き倒すを以て務と心得たり。之れに対してイブセン黨はブョルンソンを目して不當の聲名を得たるもの、國民的に過ぐるものとして批難す。而してイブセン。ブョルンソン各自は與り知らざる所なれども、追隨者の黨派熱を如何ともし得ざるなり。イブセンが此の種の狭隘卑小無益の爭を事とするものに倦み疲るゝに至れるは恠しむに足らざるなり。
[#ここで字下げ終わり]
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*註1:クリスチアニアにては
原本では文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。
なお、この段は前ページにつづき、「ゴッス(=エドマンド・ウィリアム・ゴス)」の文章からの引用部分のため1字下げとなっている。
*註2:免るゝ
「免」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/men_manukareru.jpg
*註3:途なく
「途」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註4:社會
「社」の旧字体。扁の「ネ」は「示」。
*註5:熱烈・黨派熱
「熱」の俗字体(か?)。「執」+「レンガ(レッカ)」。下記 URL の文字は作字したもの。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sakuji_netsu.jpg
*註6:公平
「平」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hei.jpg
*註7:判斷
「判」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/han_wakaru.jpg
*註8:文學史
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg
「史」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/shi_humi.jpg
*註9:過ぐる
「過」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註10:批難
「難」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/nan.jpg
*註11:知らざる所
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg
*註12:追隨者
「追」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg
*註13:狭隘
「狭」の旧字体。旁が「夾」。
*註14:無益
「益」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/eki_masu.jpg
*註15:倦み
「倦」の旧字体。旁の「巻」が「卷」。
*註16(補足):ブョルンソン
今回分の「ブョルンソン」表記には「ブヨルンソン」「ブョルンリン」の箇所があったが、「ブョルンソン」に統一した。
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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1
イプセン勉強なる