『精霊の世界、星の記憶』 第7話「風の精霊」①
- カテゴリ:自作小説
- 2011/05/16 20:48:38
第二章 アプリコットの野
「風の精霊」
紅い花、黄色い花、青い花、紫色の花……と、お花畑には何種類ものいろいろな花が、美しく可憐に咲いていた。
星史は二日間、シルビアと歌を歌ったり、時々休みながら歩いてきた。
皮のようになめらかなスエードの葉の袋の水は、もう少なくなっていた。
シリンダの森の水はとてもやわらかくって、冷たくおいしかった。
スエードの葉は水を冷たいまま保存できるようだった。
ピシャの葉の袋の木の実は、まだけっこう残っている。
お花畑では、シルビアが花の蜜を採ってくれたり、花粉団子を作ってくれた。
花粉団子はもっちりふわふわで、ほんのり甘いお菓子だった。
先ほどから、シルビアは誰かとしきりに楽しそうに話していた。
姿が見えないのでよくわからないが、声からそれは女の子だということだけわかっていた。
話の内容はたぶん精霊語なので、全くわからなかった。
――シルビアには見えているんだろうなぁ。女の子みたいだけど、どんな子なんだろう?
と星史はいろいろ想像し始めた。
――ぼくと同じくらいの子かな?ちょっと上かな? 髪の色は? 瞳の色は、うーん青かな?サファイアみたいな……深い青色だったら、すごくきれいなんだろうなぁ。声がさわやかで透き通っているから、アクアマリンのような青色もいいかもしれない。明るい緑色、ぺリドット・グリーンもいいなぁ。
星史がいろいろ空想をふくらませていると、突然知っている言葉、日本語で、
「セイジ、びっくりしないでね! シルクがね、今、形をとる、姿を現すから」
とシルビアが言った。