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姫林檎❤のニコッとblog


『緊縛』



※注意)


初めに、読む際のご注意を。


この作品はダークな表現を多く使用しています

・暗い気分になりたくない人
・元々暗い気分の人
・影響されやすい人

は読むのをご遠慮ください。



この作品はダークで、極端な表現こそ避けているものの、いい気分になることは無いと思いますので、あまりオススメしません。


私にとってはこれが美学だと思い作品にしましたので、上記をご理解いただける方のみ読み進めてください。
ご意見、ご感想頂けると嬉しいです。


なお、性的表現は含まれておりませんのでご安心を。



それではどうぞ…













――――――…









目が覚めると其処は、埃っぽくて、
灰色した薄暗くて冷たい広く大きな部屋だった。


同時に自分の体が自由に動かない事に気がつき、唯一動かすことのできる顔を後ろに向けると、
背の後ろで手と足とが麻の縄できつく縛りつけられていた。
手や足だけではなく躰中に縄がはり廻っている。
そしてその縄は最終的には一所に括られていて、それを辿るとよくは見えないけれど
どうやら天井へと繋がっていて、
私はぶら下がっているようだった。


(一体誰がこんな事を…)


「誰か…!」



声を出したつもりなのに、それは声にならなかった…


何度も、声を出そうと試みたがそれは叶わず、私の叫びは音を持たず闇に呑まれた。






何も思い出せない。

私はいつから眠っていたの
どうやって此処へやってきたの



…私は何処から来たの?





目覚めたことによって、縄が躰に喰い込む痛みに気がつく。
痛みから逃れたくて私は身を捩ったり、手足を動かしてみたけれど
それは余計に縄が喰い込んで痛みを増すだけの行為だった。


ゆらゆらと躰が揺れる




諦めて身体を動かすことを辞めると、ゆっくりと動きが止まった。
だがそれは完全に止まることは無く、息をするだけでも僅かに揺り動く。


不安定な感覚に、やがて気持ち悪さが込み上げる。




頭がぐらぐらして…眩暈がする…










するとどこからか人のせせら笑う声が聴こえた。

私は首を回して辺りを見回してみたが、人影らしきものは無い。
暗く、埃で霞んでよく見えない遠くの方まで目を凝らして見てみたけれど
影の動きさえも掴めない。


それならば何故?

先程から私の耳に確かに聴こえる嘲笑い声は何処から聴こえるの?


不思議に思って思考を巡らせていると…

その声はだんだんと鮮明となり、やがて耳元までやってくる。
恐怖に目を瞑り、身を強張らせるが、嘲笑い声は止まない。
止む処か、声の数は増えて行く…

鳴り響く嘲笑い声…
その中からぽつりと低く、言葉らしき物が聴こえた



『お前は、醜い―――』


こんなにもいろんな声が混ざっているのに、その声は何故かはっきり聴こえた。

さらに言葉は続く…


『醜い汚い… お前は、本当は脆くて弱い』


『人に寄生して、やがて浸蝕していく…寄生虫』


どれも私を蔑む台詞
身に覚えの無いことなら気にする事は無いけれど、


…どれも身に覚えのある事。
いいえ、実際は私は私についてもよく分かっていないのに、
納得するものがある。

呪文のように重なる、台詞


私はそう…醜くて汚くて…   ただの寄生虫



そして段々と浮上する私の過去…




今までの私を思い出して、嫌悪感を抱く

それはやがて直接的に自分自身への嫌悪となり


先程からずっと感じていた、縄が喰い込む痛みは
不思議と心地よいものへと変わっていく。



こんな醜い私にもっと罰を、

もっと痛みを…





お願い、もっと痛みで溢れさせて


もう救われたいなんて願わないから
もう幸福になりたいなんて願わないから…



最後の願い、


「痛みを下さい」













―――――…



いつの間にか意識が途切れていたのか、

私は柔らかい布団の上に眠っていた。




眠りに着く前の事はしっかりと頭の中に有る

なのに、自分の身体を見回しても何も痕なんて残っていなかった。


そして今私が居るのは、あの冷たく暗い部屋ではなく、



見慣れた自分の部屋だった。




「夢…?」

出すことの出来なかった声も、今はしっかりと発することが出来ている。






あの緊縛は、私が私自身へ与えた罰

そう私自身が醜くて汚い事は、目が覚めても変わらないから。





私はまた罰を与えなければならない…





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