『精霊の世界、星の記憶』 第5話「出発」②
- カテゴリ:自作小説
- 2011/04/16 22:57:17
「これ、セイジのよ」
「ぼくの?」
「うん、セイジの。スエードの葉で編んだ方の袋にはお水、ピシャの葉で編んだ方の袋には木の実が入っているの」
星史は二つの巾着袋をシルビアから受け取りながら、重い方の袋を上下にゆらし、
「こっちがお水だね」
とシルビアに聞いた。
「ええ、そうよ」
とシルビアは微笑んで答えた。
「セイジ、これを腰に巻くといいわ」
とシルビアはさらに星史にやわらかく丈夫な木の蔓を渡す。
星史はそれを受け取り、ベルトのように腰に巻いた。
「蔓にね、こう袋結び付けておくといいわ」
とシルビアは自分の腰に下げている袋を指しながら言った。
星史はシルビアに言われたように、腰に二つの巾着袋を取り付けた。
「セイジ、出かけましょう」
とシルビアは星史の手を取って、
「こっちよ」
と言いながら引いた。
「シリンダの森は広いの。場所によっては、迷路みたいになっていたりするから」
とシルビアはちょっとうつむきながら言った。
そして、
「大丈夫よ、近道を通って行くから。私だけの秘密の道なの」
とさらにシルビアは星史の手を強く握った。
星史はシルビアに引かれるまま、付いていった。
森の景色が途切れ途切れの断片のように、流れて行くような感じがする。
足場も先ほどの土の上の感覚とは違い、宙を歩いているような分けのわからない感覚がした。
まるで時間を短縮しているような感じだった。
そんな摩訶不思議な道を変な感覚と感触を感じながら、星史はシルビアと三日間歩いてきた。
――本当に広いんだなぁ。
と思いながら、星史はシルビアと時間を飛び越えるように歩いていた。
しばらくすると、どこからともなく甘酸っぱいような香りがしてきた。
「もうすぐぬけるわ」
とシルビアがつぶやいた。
森をぬけると、まぶしい太陽の光が差してきた。
森の中のやさしい光とは違って、ちょっと強い光だった。
見上げた空は、星史の住んでいる世界の灰色がかった空とは違い、とても気持ちがいいスカッとするような青色をしていた。
あまりにも心地よい空だったので、星史は思わず立ち止って、両手を空に上げ大きく伸びをした。
こんにちは!
とても嬉しいコメント、どうもありがとうございます♬(≡^∇^≡)
お褒めくださり、嬉しいです☆
これからけっこう長い旅になっていくと思います♪
よろしくお願いします!^^
それに、すっとお話しの中に入れて一緒に旅していくことができます
久しぶりの刊行ですね
ずっと楽しみに待っておりました^^