『かぼちゃくんの宅急便』大震災 (児童文学)①
- カテゴリ:自作小説
- 2011/03/20 17:06:33
かぼちゃくんはその日、左手を胸にあて目を閉じ、亡くなられた方のご冥福を祈り、そして一人でも一匹でも命が無事でありますように祈りました。
かぼちゃくんは夢のなかに住んでいます。甘いものが大好きなので、おうちはショートケーキでした。夢のなかで、かぼちゃくんは大きな被害に遭われた人々の悲しみや現実の声を聞きました。かぼちゃくんはとても胸が痛みました。
――ぼくに、できることはあるだろうか?
かぼちゃくんはちょこちょこ起きる地震におびえる子や暗くて泣いている子、おなかがすいてぐずっている子……、そして何よりもお母さんやお父さんが亡くなってしまった子どもたちに、せめて夢だけでも甘くしてあげたいと思いました。そこで大好きなショートケーキのおうちを小さくちぎって、大きな袋に入れていきました。
大きな白い袋は、サンタクロースのおじいさんの袋のようにいっぱいになりました。
「よっこらっしょ!」
とかぼちゃくんは袋を持ち上げ、背中に背負いました。
かぼちゃくんはまず、大切な人たちを失ってしまった子どもたちの夢にもぐりこみました。ある小さな男の子の夢です。真っ赤な血の空間、コンクリートの崩れた山……かぼちゃくんは少しこわくなりました。しかし、その空間のなかに、小さくぽつんとひざをかかえて座りこんでいる男の子を見つけました。その男の子は、夢のなかの男の子で、男の子の心であります。
家が突然大きく左右にゆれ、男の子は突き飛ばされるように尻もちをつきました。男の子はびっくりするのと同時に、こわくって体が動かなくなってしまいました。目の前にタンスが倒れてきました。そのときです、お母さんがかけよって来て男の子を突き飛ばしました。しかし、お母さんはタンスの下敷きになってしまい、そのまま動かなくなってしまいました。
ゆれがおさまると、近所に住むおばちゃんが男の子とお母さんを探しに、様子を見に来てくれました。おばちゃんはお母さんの姿を見てタンスをどかそうとしましたが、また地震がきました。おうちがミシミシ、ギシギシ、変な音がします。おばちゃんはとっさに男の子を抱きかかえて、外へ走り出ました。そして、必死に避難所へ駆けていきました。