本番はまだだったらしい。

というか、震度5程度で大騒ぎしすぎ。
近所の九段会館は崩壊したらしいけど・・・
実害なかったんだから、安心して仕事しろよ、と。

とはいうものの、余震が続いてる最中、
社の責任者たる社長は帰宅指示を出さざるを得ず。

俺様は転職の面接に行こうと喜び勇んで社を出ようとしたのだが。
なぜか同じ方面の人間で固まって帰ることに。
いや、貴様らのお守りのために俺様の将来を棒に振れってかい？

で、致し方なく面接先に電話。
すると。
”あー、こんな状況ですから、命を大事にしてください、
　日程はまた追ってお知らせしますから”
なんていい会社だ。
お前らはまだ仕事してるというのに。

こんないきさつにより、結局徒歩で帰宅するわけで。
ま、ざっと5時間くらいか、と読む俺。
見積もりの甘いメンバたち。

不安は的中。
行動不能者一名発生。
パニック障害のうえ、人ごみにもまれてしまえば無理はない。

俺様はタバコさえ吸えれば待ち時間などいくらでもつぶせるし、
はじめからここぞとばかりに遊んでやろうかとも思ったくらいなので、
どうということもなく。
せーぜー俺様の足を引っ張るなよ、くらい。

だがしかし、人のペースに合わせて歩く、というのは
なかなかに大変であり。
人の動きを予想して、間隙を見つけて切れ込む俺と
集団行動で固まって移動する周りでは当然速度が違う。
あー、これは最悪、帰らん必要もあるか、とも思った。

休み休み行く、という提案があったので、
コンビニで酒を飲みつつ、だらだらと歩くわけだが・・・
（ちなみに飲んでいたのは俺だけである）

・・・結局、俺のペースに合わせようとしてしまった周りが早くも陥落。
腹ごしらえと休憩をあわせて某Fネスバーガーへ。
俺様は当然腹が減っているので、一番でかいのを注文。
（WWバーガーとか書いてあったかな？）
すると、あとの客に品切れを続々といい始めた。

・・・仕方なく貴重な食料を周りに分け与えることに。
お前らが元気にならんと俺様まで疲弊してしまうからな。

しかしまぁ、腹が減る減る。
歩けど歩けど、飯屋のにおいが俺様を誘惑する。
そのたびに周りからクギがささる。

はいはい、進めばいいんでしょ、進めば。
くっそー、俺様一人であれば、楽しく食べ歩きしながら帰るのに・・・。
（不謹慎かつとことんまで団体行動のできないまもである）

一人、寒いという人間がいたので、
俺様のマフラーを貸すことに。
俺様は寒さなど苦でもないし、長野の冬に比べれば問題ない。
コートの前も全開状態。むしろ暑い。
（体温を下げないために飲んでいるのだから当然でもある）

しかしまぁ、すれ違うオネーチャン観察をしてると、
綺麗なネーチャンの多いことだなぁ、と思っていた。
そうだな、俺様の二次元の彼女が画面から出てきてくれれば、
こんなことを考えないのかな、など。
からあげ詰め合わせを後輩の女の子が俺に食べさせようとしていたが、
俺は指でつまんで口に放り込んだ。
・・・俺様は自分のものでない女にそんなことはさせない。
（非常に機嫌を損ねたようだが、そこは気にしない）

えんえんと歩くこと数時間。
いい加減限界にきた女の子が泣き出してしまった。
あーもー。なーくーなーよー（。。；

というわけで、また食事場へ。
今度は好き放題に食うことにした。
食う、食う、飲む。
俺様は道も知ってるし、到着予想もできるし、
歩いて帰るなんて普通のことだから、
何でもないように思っていたんだけど・・・
どうやら、他の人間は道を知らず、未開の地を歩く感覚だったようだ。
そりゃさぞかし心細いことであったろう。（他人事）

建物の倒壊もなく、道も平坦な状況で、
大きな混乱もない状況なのだから、何の不安要素もないはずなのに。
歩きなれない道を歩くだけで消耗するという人間の不思議。

とりあえずその子の救援依頼を実家にかけさせ、
迎えが来ることを待つことに。
好きにしてくれ、俺は朝まで飲む覚悟もあるんだ。

・・・いくばくか。
結局迎えと合流したのはそれから3時間後のことだった。

・・・さらにその迎えに混ぜられた俺は、
生けるカーナビとして活動を余儀なくされた。
車使えただけいいか。

かつて読んだ防災マニュアル小説を思い出した帰路だった。

・・・地震から帰宅まで、心配だったのは
機材とギターとテレビと食器のことだった、という現実。
家族への心配はどこへいったんだろう。
（まだ連絡取れてねーんだよなー）