『精霊の世界、星の記憶』 第4話「空気の精霊」②
- カテゴリ:自作小説
- 2011/03/08 23:57:25
どこからか、美しく澄んだ声がした。
星史はドキッと驚いたが、シルビアは微笑んで、
「シルフィーヌ?」
と声の主に聞いた。
声の主は「そうよ」と答える代わりに、星史とシルビアの前に姿を現した。
星史はさらに驚いて後に一歩下がった。
それを見たシルビアとシルフィーヌはクスクスと小さく声を立てて笑った。
星史はちょっとおもしろくなかったが、淡い青色の髪がふわふわとゆれている少女を見つめた。
髪は淡い青色だが、瞳の色が深い青色をしていて吸い込まれてしまいそうだった。
「私はシルフィーヌ、シルフ族よ。よろしくね!」
とシルフィーヌは手を差し出したが、星史は見とれていてぼぉーっとしていた。
シルビアが「セイジ」「セイジ」と耳元で星史の名を小さく呼んでいた。
星史はハッと我に返って、
「よっ、よろしく!」
とあわてて答えて、シルフィーヌの透き通るような手を取った。
「えっと、ぼくは星史。森村星史」
とシルフィーヌに名のると、シルビアが、
「シルフィーヌは空気の精霊よ。シルフ族っていうのは、空気の精霊族のことなの」
と星史に説明した。
「空気の精霊族? へぇ、精霊にもいろいろ種族があるんだね」
と星史は関心を示した。
「そうよ。シルビアはね、シルヴァン族よ」
とシルフィーヌが言った。
「シルヴァンぞく? それって、森の精霊族のこと?」
と聞くと、
「あら、すごいわね!」
とシルフィーヌが目を丸くして言った。星史は恥ずかしくなって、
「あっ、だって、……その、シルビアがさ、森の精霊だって言っていたから……」
とあわててそう付け加えた。
シルフィーヌは時々ふわりふわりと浮きながら、星史を観察するように見つめた。
そして、
「ねぇ、シルビア。セイジをイリス様のところに連れて行ってあげるといいわ」
と言った。
「えっ? イリス様のところに?」
「うん、そうよ。イリス様のところに。セフィロス様が、そうイリス様にお告げなされたの」
とシルフィーヌが言うと、星史が、
「セフィロスが?」
と聞いた。
「そうよ。セフィロス様がイリス様にどんなお告げをされたかわからないけど……」
「セフィロスは、そういえば……精霊たちの力を借りて、って言っていた。精霊の世界を見て歩け、とも言っていた」
と星史は老樹セフィロスの言葉を思い出すようにつぶやいた。
「セフィロス様はお疲れでほとんど眠ってしまわれているけど、セフィロス様の思いの声をイリス様は聴くことができるの。普段はセフィロス様のお声は聞くことができないから。セイジはセフィロス様に呼ばれた、だからセフィロス様が目覚めて待っていたのね」
とシルビアはそう静かに言った。
「セフィロス様が目覚めていたの?」
とシルフィーヌが驚いて聞いた。
「ええ、今朝は目覚めなされていたのよ。もう、眠ってしまわれたけど……」
とシルビアが答えると、
「それで森がいつもより瑞々しいのね」
とシルフィーヌがふわふわふわーっと露の玉を浮かせた。
シルビアは黙ったままうなづいた。
「セフィロス様のことは、心配しなくていいわ。セイジと一緒に行ってあげて」
とシルフィーヌが言う。
シルビアはうなずいたが、老樹の方を見つめていた。
「大丈夫よ。わたしたち空気の精霊の他に、風の精霊のプリメーラやウィンディ、川の精霊リヴァムと娘のニース、木の精霊のチェストとか……、ほら、いっぱいいるでしょう?」
とシルフィーヌは、大丈夫という感じに明るく言った。そして、
「セイジはセフィロス様がお呼びされたのでしょう? セフィロス様のご意思よ」
と付け加えた。シルビアはしばらく考えていたが、
「私、セイジと一緒に行くわ。セフィロス様のことお願いね!」
とシルフィーヌに言った。
「うん、みんなにもそう言っておくわ。じゃあ私、イリス様のお言葉を伝えたし、みんなに伝えにいくわ」
「ありがとう」
「いってらっしゃい。セイジもね」
とシルフィーヌは淡い青色の髪をふんわりなびかせ、鳥のように軽やかに一瞬にして消え去って行った。
そしてシルビアも、星史にここで待っていてと言って、消えて行った。
≪・・・・・・つづく≫
とても嬉しいコメント、どうもありがとうございます♬(≡^∇^≡)
春の森のような、初夏の森のような、そんな命あふれる美しい森です♪
瑞々しい森、その森を作った始祖大樹がセフィロスさんです☆
春の旋律を紡ぎあげていく世界に引き込まれてしまいました
うっとりします
この美しい世界で呼ばれた星史はどのようなお告げを受けたのでしょうか
気になります