Nicotto Town


✪マークは作り話でし


✪小さな小さなグランドピアノ Ⅱ

それから、しばらくたった朝の事です。
サチコを起こしに来たお母さんが首をかしげて言いました、
「なんだか、このピアノ大きくなったんじゃない ? 」。
サチコは、とび起きました。
「まさか ! お母さんたら。ピアノが大きくなるはずないじゃない」、
そうは言ったものの、実はサチコも昨日から同じ事を考えていたのです。
ずっと、気になっていた事を、とうとう言われてしまったというわけです。
「そうかなぁ ? 」
お母さんは首をかしげながら、ピアノをのぞきこむように見ています。
「そうょ」
それでも、サチコは自分に言い聞かせるように、きっぱりと言い切ると、
くるりとピアノに背を向けました。
だって、もう、どう見ても、ケーキ皿にのらない大きさになっているのですから。
「ただね、お母さん。このピアノ、キッチンの出窓に置いたほうがいいと思うの」、
「そうねぇ」。
確かに、サチコの机の上に置くにはチョット大き過ぎるようです。
とりあえずピアノは、キッチンの出窓に置く事になりました。
それから、また、しばらくたった朝の事。
トーストをかじりながら、サチコはチラチラとキッチンの出窓を見ていました。
すると、ミルクティーをコンと置いて、お父さんが言いました。
「なんだか、このピアノ大きくなったんじゃないか ? 」、
サチコは、また、あわてました。
「まさか ! お父さんたら。ピアノが大きくなるはずないじゃない」、
そうは言ったものの、やっぱり、サチコも同じ事を考えていたのです。
「そぅかなぁ ? 」
お父さんは首をかしげながら、新聞をめくります。
「そうょ」
サチコは、また、きっぱりと言い切ると、くるりとピアノに背を向けました。
だって、ピアノはどう見ても、
キッチンの出窓にはつり合わない大きさになっているのですから。
「ただねぇ、お父さん。このピアノ、リビングに置いたほうがいいと思うの」、
「そうだね」
お父さんは新聞をたたんで、ちらりと出窓を見ました。
やれやれ、とでも言うように。

リビングにうつすと、ピアノはぐんぐんと大きくなりました。
お父さんも、お母さんも、もう何も言いません。
もともとそこは、サチコのピアノが置いてあった場所でしたから。
サチコはいつのまにか、ピアノのメロディばかり聞いてすごすようになっていました。
そして、ピアノの音を聞くたびに、また、とても変な気持になるのでした。
胸の中でむくむくと、何かが大きくなるような。
それは、ちょうどピアノが大きくなっていくのと、とてもとてもよく似ていました。

ある日、サチコはピアノを見て、突然懐かしいような不思議な気持ちになりました。
そうです、とうとうピアノは、サチコが弾けるくらいに大きくなったのです。
サチコは、おそるおそる、ピアノのふたを開けました。
ポロロ~ン ♪
指先で鍵盤をかるくたたくと、とてもきれいな音がリビングに響きました。
むくむくとまた、何かがまた、サチコの胸の中でふくらんでいきます。
ポロン ♪
ポロ~ン ♪
ポロロ~ン ♪
サチコは確かめるように、ひとつひとつ鍵盤をなぞっていきました。
ひとつ音を鳴らすたびに、また、むくむくと、胸の中に何かは大きくなるのでした。
サチコはしまっておいた楽譜集を、そっと、手に取りました。
すると、パラリと一枚の楽譜が落ちました。
発表会で弾くはずだった「スタート・ライン」という曲です、
もうすぐ発表会と言う時の事故だったのです。
サチコは静かに目を閉じ、それからゆっくりと目を開けました。
そして、思いっきりピアノを弾き始めました。
こわごわと鍵盤をたたく指が、少しずつ滑らかに動き始めます。
懐かしいメロディに、いろいろな記憶をよみがえらせながら。
初めてピアノを弾いた時の事、
友達とケンカしたり笑ったりしながら連弾した思い出。
うまく弾けずに、朝から晩まで練習した事。
そして、ピアノをやめた時の事ーーー。
久しぶりに弾くピアノは、思うようには弾けません。
指が動かず、つまずきながら、つかえながら、それでも最後まで弾いた時、
サチコの胸の中でむくむくと大きくなっている物が、ついにあふれだしました。
「ピアノが弾きたい」
サチコは、小さくつぶやきます。
「ピアノが弾きたい、ピアノが弾きたい」
サチコの指は、もう一度「スタート・ライン」を弾き始めています。
どうして今までピアノを弾かずにいられたのか、
うまく弾けなくても、思うように指が動かなくても、
サチコには、もう、止める事が出来なくなっていました。
サチコの胸の中でふくらんでいたもの、それは、
ピアノが弾きたいという思う気持ちだったのです。
時間を忘れて、サチコはピアノを弾き続けました。
どれくらい弾いていたのでしょう、ピアノを弾く手をふっと休めた時、
サチコはピアノがカチリと音をたてるのを聞きました。
まるで、ハットしたみたいに。
ピアノはどうやら、やっと思い出したようでした、自分がピアノだって事を。

アバター
2011/03/06 23:08
エクリュさんコメントありがとう。

あははは・・・・、だって作ったらみんなにあげちゃうから・・・。

倒産しちゃうでしょ。
アバター
2011/03/06 22:15
ねぇ、これいつ絵本にするの?(*^^*)
アバター
2011/03/06 21:59
二人静さんコメントありがとう。

真夜中のドアをたたいてください。
アバター
2011/03/06 21:58
雪子さんコメントありがとう。

あんまり現実離れしてしますと、話しが面白くないのでlastはリアにいきます。
アバター
2011/03/06 21:50
(3)が在るのかな?
在るのなら 読んでみたいです。
アバター
2011/03/06 21:48
逆だね。
ピアノの方が大きくなるなんて。
もしかしてピアノがメル友なの?
アバター
2011/03/06 20:49
紅蓮さんコメントありがとう。

面白過ぎる発想に一本取られました・・・・、残念ながらどれもハズレでし。

真夜中にlastを公開予定でし、ま~~~~読んでミソ !! 。
アバター
2011/03/06 20:42
おお~~・・・
そのピアノは、水に入れとくと20倍くらいに大きくなるやつじゃないですか?
(冗談は置いといて

最初のピアノがデカくなる設定で、「最後はピアノに食べられてしまう。」ってホラーなオチを想像してしまった・・・。

最後まで読んでみて、3話目のオチは・・・・
「ピアノの中にメル友が入ってて、「ここでずっと応援してたんだよ!」って、ハッピーエンド」。
アバター
2011/03/06 17:14
うらんしゃんコメントありがとう。

ウ~が会いに来ます。
アバター
2011/03/06 17:13
ぺこさんコメントありがとう。

分厚いんですか・・・読み応え満点でしね。
アバター
2011/03/06 17:11
みかんさんコメントありがとう。

私も書いてるくせに・・・、その通りでし。
アバター
2011/03/06 17:10
まやさんコメントありがとう。

同じ境遇なんだょネ、ウ~もまた。
アバター
2011/03/06 17:08
めるさんコメントありがとう。

勇気・元気・笑顔 !! でし。
アバター
2011/03/06 17:06
瑠架さまコメントありがとう。

さぁーlastはウ~の登場でし。
アバター
2011/03/06 16:48
あらっ小人になるんじゃなくて
ピアノが大きくなったのかぁ〜@@

アバター
2011/03/06 14:55
よかったね。サチコちゃん゚+。:.゚ヽ(*´∀`)ノ゚.:。+゚

そうだ、思い出した。
HPつくろうと、分厚い本を買ったのに
途中で付箋たてておきっぱなし。。。。(@_@;)
アバター
2011/03/06 14:07
ピアノも弾いてもらって思い出したのですね~。

そういえば、日常生活野中で、使ってあげていないもの、沢山あります。

編み棒も、奥のほうのお鍋、食器戸棚の中の飾りになってしまっている食器・・・

たまには使ってあげなくちゃいけませんね。
アバター
2011/03/06 10:58
サチコの気持ちと同じようにピアノがグングン大きくなっていったんだね^^
もう一度ピアノが弾きたい気持ちに素直に気づけてよかったね^^それを察していた、友達がすごい。
アバター
2011/03/06 10:00
見るもの、聞くものに心を動かされる。
サチコがホントに求めていたものを見つけたようですね。
スタートライン、常にその気持ちを持っていたいな~^^
アバター
2011/03/06 09:54
よかったぁぁ:゚(。ノω\。)゚・。ww



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