Nicotto Town



『精霊の世界、星の記憶』 第2話「森の精霊」


第一章 シリンダの森



「森の精霊」


少年はまだ夢を見ているかのように、ぼぉーっと周りの景色を見回した。

焦点の合わない目で、大きな大木を見上げた。

――そういえば、大きな樹の夢を見ていた。樹が何か言っていたっけ……。

目が覚めたと思ったんだけど、まだ夢の中なのかな?

と思いながら目線を少しずつ下ろしていくと、ふと隣でこちらを見ているような視線を感じた。

少年は「誰だろう?」と隣でひざを抱えて座っている少女の方を見る。

少年が少女の方を向くと、少女はおもむろに顔を上げた。

少女の目と少年の目が合い、お互いの姿が瞳の中に映る。

にっこりと少女は微笑んだが、少年は少女の姿に釘付けになりじっと見つめたままだった。

――きれいな子だな。髪が金色だ……。

少女は黙ったまますっと立ち上がり、老樹の方を向き手を触れる。

少年もハッとして思わず立ち上がり、もう一度辺りを見回した。

そして、やっと自分がいる場所が一応理解できた。

「こ、ここはどこなんだろう……。ぼくは、大きな樹の夢をみていた。まだ、夢を見ているのだろうか……」

と少年は小さな声でつぶやいた。

その少年の声が、少女の耳に届く。

少女は少年の方を見て、少し首をかしげながら「ココハ?、ドコ?、ナン?、ダロウ」と二回たどたどしくつぶやいた。

そして一度地面の方へ顔を下げて、少年の方へ向き直しおずおずと確かめるように、

「ココハ、ドコ、ナンダロウ。ココハ、セイレイノ、セカイ。ワタシ、ハ、シルビア。アナ、タハ?」

と片言のような言葉でたずねてきた。

少年はあわてて、

「ぼくは星史。森村星史」

と顔を赤くしながら答えました。

「セイ、ジ……。モリ、ムラ、セイジ……」

と少女は、シルビアは繰り返した。

星史は「そうだよ」と大きくうなづく。

「セイジ、ココ、ドコ? ココ、シリンダ=シーリ。シリンダ、ノ、……モリ」

「えっ? シリンダの森? ……、聞いたことがないなぁ。ここ日本じゃないんだね……。どこの国?」

「ク、ニ? クニジャ、ナイ。シリンダ、ノ、モリ……。セイレイノ、セカイ」

「セイレイの世界? ……えっ!、まいったなぁ。まだ夢の中か……」

と星史は頭をかきながら言った。

「チ、ガウ。ユメジャ、ナイ。ホントウノ、セカイ」

「えっ? ……本当の世界。外国じゃないなら、地球じゃないところ?」

と星史が驚きながら言うと、シルビアは、

「エッ?……チ、キュウ……」

とつぶやいて、右手の人差し指を唇にあてて突然クスクスと小さく笑い出した。

笑いがおさまると、

「ゴメン、ナサイ。ココ、地球ヨ」

と星史に言った。

「地球なんだぁ。何か、地球に似ているようだけど……」

と納得がいかないというように、星史はつぶやく。

「デモ、地球ヨ。ソンザイ、シテイル、世界ガ、チガウノ」

「存在している世界が違う? 違うってことは……」

と小さく口に含みながらつぶやき、そして突然、

「ええー! って言うことは、本当にセイレイっていう世界なの?」

とものすごく驚いて言った。

「そうよ」

とシルビアは冷静に大きくうなづきながら言った。

星史はシルビアをじっと見つめた。

「セイレイって、おとぎばなしとかによく出てくる精霊だよね?」

と星史が聞くと、

「タブん……、そう……、かも」

とシルビアは答えた。

「ということは、シルビアも、君も精霊なの?」

「そうよ。もちろん。わたしは、この森、シリンダ=シーリの精霊、なの」

星史はシルビアを頭の上から足までじっと見つめた。そして、

「人間と姿が変わらないんだね」

とひと言、ぽつりと言う。

その言葉を聞いて、シルビアはちょっと苦笑いした。

「姿、形は、そう、変わらないわ。安心、した?」

とシルビアは星史に言った。

「あのさぁ、シルビアは、ぼくの言葉が話せるんだね」

と不思議そうに星史はシルビアに言う。

「ええ。地球の言葉なら、たいてい、話せるわ」

「へぇ、すごいね!」

と星史は思わず感嘆の声を上げた。するとシルビアは恥かしそうに、

「でも、最初は、どこの国、の、言葉か、よくわからなかった、の」

とうつむきながら言った。星史は、そんなシルビアを可愛いと思った。

「そうか。それで最初、片言だったんだね」

とシルビアに笑顔を向けた。そして、

「精霊には、言葉がないの?」

と聞いた。

「あるわ。精霊同士なら精霊言葉を使うわ。でも、木々たちとは心話。しんわ、心で会話するの。あのね、シリンダ=シーリ、シーリは精霊言葉で森っていう意味なのよ」

「へぇ、そうなんだ」

と星史は大きな樹、老樹を見上げながら言った。

「シルビアって、すごいね! この樹とも、話せるんだ!」

「ええ、もちろんよ!」

と言い、シルビアはもう一度老樹を手で触れる。

「セイジ、こうやって。そして目をつぶって」

星史は言われたとおりに老樹に手を触れ、目をつぶった。

「この樹は、セイジを知っている。セイジも、知っているはず。きっと、聞こえるわ。この樹の声が……」

とシルビアはよく澄んだ声で、流れるように言った。



≪・・・・・・つづく≫

#日記広場:自作小説

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2011/04/16 22:35
>若草さんへ

とても嬉しいコメント、どうもありがとうございます♬(≡^∇^≡)

星史くんはどうして呼ばれたのでしょう・・・・・・セフィロスさんの真意は?
というところですね?!
森の精霊シルビアさんはやさしい方なので、きっといろいろお世話してくれると思います!^^
ありがとうござます☆
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2011/02/26 23:09
こんばんは^^
精霊の森 シリンダの迷いこんだ星史
どんな使命を帯びてやってきたのでしょうか
精霊シルビアとこれからどんな旅が始まるのでしょうか
すごく気になります^^



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