Nicotto Town


YUKIEのきまぐれ日和


小さな春への前奏曲①

 私はこの春、県内ベスト4に入る学力ランクの高い高校に入学した。合格して、とてもうれしい。
 高校生になれば、中学とは環境が変わるから、いろんな期待や不安がたくさんある。

 入学して間もなく、私は部活をどうしようか迷っていた。
 最初は、中学の時と同じブラスバンド部に入ろうかとも考えたが、スケジュールを聞くと、とっても勉強と両立できそうにないのでやめた。
 無所属でもいいのだが、やっぱりどこか軽めのところに入りたいと思っていた。
 

 そんなある日、音楽の先生に用があったので、音楽室へ行った。ところが、音楽室にも、隣の準備室にもいないので、教務室へ行こうとした。
 と、その時、音楽室からピアノの音色が聞こえた。聞いたことのない曲だ。
「きれいな曲だなぁ。誰が弾いているんだろう?」

 そ~っと、音楽室を覗いてみると、弾いているのは男子だった。結構かっこいかも・・・。手つきも鮮やかで、ミスなくすんなり弾いている。プロみたい・・・。それに、この曲もすっごくきれいだなあ・・・。
「はぁ~~~。」
 弾いている姿と曲に魅せられて、もう夢中になって、何も考えられなくなった。

「あらっ、中田さん?」
「あ、先生。ちょうどよかった。用があるんですけど。」
「ああ、はい。ところで、さっきなに見ていたの?」
「ピアノを弾いている男子がいたので。」
「あぁ、そういえばピアノの音が聞こえたね。」
 もう一回音楽室を見たら、さっきの男子はもういなくなっていた。

 一体誰だろうあの人。それに、あの弾いていた曲、なんていう曲なんだろう・・・?あの、幻想ぽいって言うか、春っぽいって言うか・・・。


 その日の夜、お父さんがパソコンを使って何か曲を聴いていた。
(あっ!あの曲だ!)
「お父さん、それなんていう曲?」
「これか?えっと(小さな春への前奏曲)だ。」
 お父さんが取り出したCDケースを見てみた。
 
 この曲は、(プレイアデス舞曲集)という楽譜の中の1曲で、吉松隆という作曲家が、ピアニストの田部京子という人に提供した曲らしい。
 お父さんに頼んでCDをコピーしてもらい、何度か聞いた。あの時の、ピアノを弾いていた人の姿が浮かんできた。


 数日後、同じクラスの彩子から誘いを受けた。
「ねえ、明江ちゃん、英語部に入らない?」
「英語部?」
 英語部の活動は週1,2回で、ALTのベッキーと会話をしたり、パーティーをしたり、スピーチコンテストの参加とかもあるそうだ。
 彩子はすでに入ることを決めていて、私にも入らないかと誘ってきたのだ。
(結構楽しそうだし、それなら勉強との両立もできそうだな。入ろうかな。)


 放課後、新入部員歓迎パーティーをやるということで、部室になっているリスニング教室へ行った。
 部室の前には私を含めて、7人の1年生が来ていた。と、1人だけ男子が・・・。
(あっ、あの人・・・。)
「明江ちゃん、どうしたの?」
「あ、うん。あの・・・男子1人だけだなぁって思って・・・。」
「ああ、前田君ね。」
「え、知ってるの?」
「うん、同じ中学校出身だから。」

 パーティーの自己紹介でわかった。
 彼の名前は前田和彦君。彩子と同じこの市内の中学校の出身。幼稚園の時からピアノを習っていて、音楽が大好きらしい。
「何?もしかして前田君のこと気になるの?」
「あ、いや・・・、別に・・・。」
 このときはそんなに気になるって程じゃあなかったけど、あの時ピアノを弾いていた姿は頭に焼き付いている。
 パーティーの時に、本人にピアノを弾いているところを見たって言おうかとも思ったが、気に障ると悪いと思ったので、やめておいた。



 というわけで、小説3作目です。ちなみに、この中に出てきた「小さな春への前奏曲」は実際にある曲です。上に書いてある曲に関することも本当のことです。

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2009/04/04 16:02
jyunさん:はい、いい曲なので、ぜひ探し出して聞いてみてください(^^)まだまだ続きます☆
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2009/04/04 15:55
青春ですね…(*^ ^*)
楽器が出来る男子ってとてもカッコいいですね〜。
うちの高校にもバイオリンが出来る人がいたなーと思い出しました。

「小さな春への前奏曲」が聞きたくなりました ♪
CDを探してみます〜。




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