■近代文藝之研究|研究|ルイ王家の夢の…(7)
- カテゴリ:その他
- 2011/02/01 23:52:14
■近代文藝之研究|研究|ルイ王家の夢の跡 三(3)
中に不斷の歡樂を藏するの宮殿が、外形に於いて却つて此の對照を有するは奇といふべし。想ふに是れ、ルイ家全盛のはじめ、マダムマントノンが冷靜の風格をこゝに印するものか。
同じき情味は更に後庭の眺めに於いて明に認めらる。試みに宮殿の西の階《きざはし》に立つて眼を放てば、大いなるかな人の智巧や。翠嵐滴《したゝ》る樹林の間には、中央に一線の大道果つるところを知らず。是れより左右に或は直《なほ》く、或は斜に、枝線縦横に發して、而も均整方圓は必ず規矩によらずといふことなし。芝生あれば轡の形に小路《こみち》を切り、花壇あれば色を組みて鍵子の模樣となす。水あれば、小なるは之れを花瓣に象り、大なるは之れを十字架に象《かたど》る。紋所《もんどころ》に似たるは、角切《すみきり》、武田菱《たけだびし》、九曜星《くえうのほし》、幾何圖に似たるは大小等邊不等邊の三角形、辻は必ず圓形をなして、路の八方より會するもの車の輻《や》の如し。さしも廣濶なる庭園は、たゞ是れ花木水石を使役して織り出だせる一面の絨壇模樣なり。
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*註1:中に不斷の歡樂を
原本では文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。
*註2:全盛
「全」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen.jpg
*註3:情味
「情」の正字体。「月」は「円」。
*註4:更に
「更」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sara.jpg
*註5:認めらる
「認」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mitomeru.jpg
*註6:翠嵐
「翠」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sui_midori.jpg
*註7:滴る
「滴」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/teki_shitataru.jpg
*註8:大道
「道」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註9:斜に
「斜」の正字体。扁の「余」が「人(ヒトヤネ)」ではなく「入(イリヤネ)」。
*註10:縦横
「横」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ou_yoko.jpg
*註11:紋所
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg
*註12:辻は必ず
「辻」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註13:織り
「織」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/syoku_oru.jpg
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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1
σ(^_^)も最近へばってます。
本文中の
> アダムマントノン
は、「マダムマントノン」のまちがいでした。
寒さのせいで硬いね体^^