Nicotto Town


YUKIEのきまぐれ日和


桜の声~後編~

 次の日、なんと誠次君が私を呼び出してきた。あの桜の下で。
「何?誠次君用事って。」
「あ、あのさ。誕生日プレゼントをみんなより早く渡したくて。」
 誠次君はそういって、細い包みを差し出した。開けてみると、中身はピンク色の扇子入れだ。扇子も入ってる。3分の2はピンク色で、3分の1はうぐいす色の地に、桜の絵が描いてある、とってもきれいな扇子だ。
「わぁ、ありがとう!すっごくうれしい。」

 扇子を広げてみていたら、
「八重、お前縁談の話があるんだって?」
「え!?なんでそんなこと・・・」
「お前、縁談受けるのか?」
「な!誠次君にそんなこと言われたくないよ!!」
「ご、ごめん。その・・・」
 すると、何かに押し出されたように言葉が出た。
「だって、私が好きなのは誠次君だもん!」
(はっ!)
 私・・・私、今・・・。
「八重、今なんて・・・?」
「だ、だからその・・・誠次君のことが好きだって・・・。」
「そ、それ・・・本当か・・・?」
「う・・・うん・・・。」
 小さいくつぶやいた。い、勢いですごいこと言っちゃった・・・。我に返って、赤面した。
「まさか、まさか八重から言ってくれるとは思わなかった。」
(え?)
 よく見ると、誠次君も真っ赤になってる。
「その・・・俺・・・、八重に縁談なんか受けないでくれって言うつもりだったんだ。俺も、八重が好きだから!」
(ええええええ~!)
 う、うれ・・しい・・。誠次君も、私のことが好きって・・・。夢見たい!

「なぁ、まだ誕生会まで時間あるし、二人でちょっとどっかいこうぜ。」
「うん♡」
 誠次君は、手を握ってきた。
(ドッキン)
 私も、その手を握り返した。
「よかったね、八重。」
「え?」
今の声・・・曾おばあ様?それとも、桜の木?どっちだろう。
「どうかしたか?八重。」
「ううん、なんでもない。行こう。」

 私は、心の中でお礼を言った。声をかけてくれた桜の木に。そして、会いに来てくれた曾おばあ様に。
(ほんとに、ほんとに、どうもありがとう。)





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