創作小説「ジオラの記憶」(2/3)
- カテゴリ:自作小説
- 2010/12/01 23:01:50
ジオラの記憶 ~復活遊戯~ 不安を胸に抱えながらも我子の誕生に喜んだ。 晏華の腹も大きくなっていったが、子供の本当の親が誰なのかというウワサすら立たなかった。“いずれ里長になる“と彼女が口にしていたことから、夫に疑問を持たせてはならないと口をつぐんでいるのだろう。 気に病む親友を励ましつつ、それでも気を張る生活を送っていた。 しかし、誰も想像していなかった事が起こる。 一年が過ぎても晏華の腹は大きく、子を宿したまま産まれない。 『この子は特別な子だもの、普通の生まれ方じゃイヤなのよ』 そして、2年の歳月が過ぎる頃、館の奥で産み落としたのだと耳にした。 里長の子だとお披露目もされず、ウワサだけが里に広まり、2年も腹の中にいたから死産だったんじゃないかと誰もが思っていた。 『エンユ』『クルト』と名付けられた双子の兄弟は元気にすくすくと育っていく。 邪法士という仕事柄、人の欲望を見続け、心を凍らせ冷徹さを身に着けていたが、里に戻り彼ら家族の姿を見ると、心が温かくなるのを感じていた。 話し走り始めた男の子を、まだいない我子を見る思いで眺めている時、別方向からの視線を感じた。 長い黒髪の女。すぐその場から立ち去ってしまったが、見覚えのあるその顔は晏華だった。腕に何かを抱えていた。 イヤな予感を感じつつも数日後、仕事のためレントと共に里を離れ――戻った時、事件は起きていた。 母親のモーラに抱かれ泣きじゃくる兄弟の腕には、黒い紋様が刻み付けられていた。 肩から肘にかかって描かれたそれは、決して逃げられない生贄の刻印。 「どういうことだ、コレは?」 「見ての通り、生贄ですの」 里長の元へ乗り込んだレントと共に見せられたものは、人の形をしていない肉塊だった。 「ほら、見て」 と杯に入れられた紅い液体をそれに注ぐ。 鉄の臭いが鼻に届き、液体は血であると気づく。 赤く汚れた肉塊の表面だったが、次第に薄くなり後に何も残らない。 「……取り込んでいるのか……?」 「血を浴びたとたん、この子は声に反応して動いたのよ」 そして、再び杯を傾け、血を吸わせる。 またしても吸収された血液だったが、肉塊がピクンと反応すると、表面の一部が裂けた。 ――『眼』。 「すごいわ、成長しているのね」 ひとり喜ぶ晏華の横で、化け物という言葉を必死で飲み込んだ。 「この子が立派に成長するために、一人でなく二人も授けてくれたのね」 「その杯の血は?」 実兄の固く、怒りを押し殺した声質に妹は気付かない。 「刻印の時に溢れた血ですわ。もったいないわ、せっかくだもの」 キョロキョロと動く肉塊の眼を見て、レントが耐えかねたように部屋を出て行くのを慌てて追いかけた。 背後からは、嬉々とした女の声が聞こえていた。 「――里を離れる」 親友の言葉に力強く頷いた。 夜陰に紛れ、里を出た5人にすぐ追っ手がやってきた。 邪法士の組織を抜け出すことは死を意味する。 それでも幼い子供を見殺しにして里に居続けることは出来なかった。 まず倒れたのは母であるモーラ。 彼女は殺してもいいと言われていたのだろう。 攻撃力を持たない彼女が防御だけで切り抜けるには邪法士たちの腕が良すぎた。 逃げるレントを囮として離れて別行動をし、十分敵を引き連れて背後から挟み撃ち。それで半分以上倒したが、今まで同じ仲間としてお互いの腕を知っているだけに簡単にはいかない。 レントは子供を託し、邪法士の足止めをするため自ら犠牲になった。 二人の子供を連れ、山の中を人のいる里へと向かう中、追いついてきた追っ手。 慌てたクルトが落ち葉に足を取られ、崖から川へ落ちた。 「クルト!」 身を乗り出した所へ人の気配を感じ息を呑んだ。 落ちて水に呑まれたクルトを素早く抱き上げた青年と眼が合った。 驚きと心配そうな表情から、追手の者ではないと確信する。 そして背後に迫りつつある邪法士の気配。 泣くエンユを素早く抱きかかえると、青年に向かって風の法術を飛ばす。 『クルトを…その子を頼みます』 水音を聞きつけて躊躇いもなく子供を助けに川に飛び込んだ青年…後に西院の法術士・クウマであると知る、彼を信じて。 エンユを連れて追っ手から逃げ切り、たどり着いた先は北院だった。 北院の長は邪法士から抜け出たジオラを、そしてエンユを、全てを知った上で受け入れてくれた。
第2話
開いた表皮の奥にキロリと黒いモノが動いたのが見えた。
第2話のお届けでーすww
あはは 暗いでしょ?
こんな過去を乗り越えていくエンユとクルトの二人が好きなのさ~~♬
次が最終でーす。
エンコとクルト!
でも、母親は普通?異常?
里長の母
権力
独り言でした。
(^^)