12月自作/「雪・氷 『除雪』」
- カテゴリ:自作小説
- 2010/11/28 03:25:15
外に出た空気がゆるんでいた。
こういうときの雪は水分が多くベタベタで、せっかくの除雪機にまとわりつくのがイライラするのが、作業前からわかるので、葵はげっそりした。
とはいえ、未明に道路の脇に押し寄せられた雪山は水分を含んで重たく玄関前に山になっていて、ほったらかすと雪が氷になってしまう。
モコモコの作業コートと長靴、どうせびちゃびちゃになるであろう軍手を付ける。外に出る前、いつになくうるさくて早くに起きた、飼ってるいんこ達の、不機嫌な鳴き声がビヨッときこえ、雪を知らぬ鳥に、やる気をさらに削がれる。それでも、除雪作業にいくドアを開けた。
さすような寒さはないが、太陽は作業を助けてくれそうになかった。除雪決行を再確認する。
除雪機のエンジンをかける。この冬初めてのエンジンは、一回で目を覚まさなかった。
「冬眠ならぬ夏眠だな、おーい、働く季節だぞ」
独り言をいいながら、エンジンをもう一度かけた。ブロン、ブロッ、ブロロロロロロロ!どうやらめが覚めたようだ。エンジン音は近所に響き渡る。除雪機を持ってる家庭は少ない。高齢の両親が、一人娘の除雪のために購入したものだ。この音が妬みの対象にもなることを知りながらも、近所に響かせる音に、葵は得意な気持ちになってしまう。
除雪の音にガラスの向こうの暖かい部屋のいんこが反応して鳴いた。
冬を知らない鳥が除雪機のサウンドに反応するのが、葵にはおかしかった。
直にこのべた雪がパウダースノウに変わり、空気がキーンと張り詰める季節がくる。葵はパウダースノウを除雪機で飛ばし、部屋の鳥が鳴くギャップが好きだ。それは春への扉だからだ。そして葵自身の春もまた期待するのだ。除雪機で雪を飛ばしながら、パウダースノウが、まるでフラワーシャワーのようにキラキラと舞う時期はもうすぐそこだ。
(おわり)
雪国に住まう方らしい感じ方ですね。
雪にも違いがあり、気温も周りの空気も変化する。雪の美しさや楽しさだけでなく除雪の苦労もあります。
今年はどうなることか、と思わず考えてしまいます。
今年は寒いからもしかしたら私の家でも見れるかも…
雪は雨と違って静かなので好きです。(毎日降られては困りますが…
べた雪がたま~に降っては すぐにとけてしまったり
こんこん雪がたま~に降っては 風に流されてしまったり
積もることってないんですよね、この地方(>_<)
ぼうぼうさんの小説で 新しい感覚を疑似体験しました(^O^)
パウダースノウ
見てみたいきもします
本土の雪は湿気が多いもので
南関東にいる私には雪で季節感を感じることがないので、自分がインコの立場になったようで、何だか目新しいものを見ているような気分になり、最後はとても爽やかな思いが広がりました。(^-^)