創作小説「封夢宮」(6/10)
- カテゴリ:自作小説
- 2010/11/11 18:47:56
第6話
「炎朱、炎朱」
遠くで自分の名を呼ぶ声が聞こえる。
ここはどこだろう………。
ふわふわした感覚が離れない。
息苦しさが体を占め、身動きがとれない。
名を呼ばれるたびに息苦しさが消えていく。
その中で夢を見ていた。
今まで会ったこともない、自分と同じ黒髪で赤眼の…お父さん…? 幼い小さな自分を対等に扱い、またその様子を見守る優しい父親としての瞳で見ている。
緑に包まれた山の奥で、その中の自分は幸せそうに笑っていた。 何も知らない無垢な少年だった。今までの出来事のほうがまるで夢だとでも言うように。
――総てを忘れたいのだろうか……自分は。
「炎朱」
呼ぶ声。
「炎朱」
気遣う声。
待ってる、と。
きっと彼女も待ってるだろう。
水愛。
幼い頃、湖の沿岸にひとりで眠っていた彼女。
幼い頃、母らしい人に連れられてこの村に辿り着いた自分。
お互いに何も持っていないことで支えになっていた。
大切なモノは彼女以外になかった。
助けてみせる。
絶対に、自分の手で。
その為には目覚めなければ。
“目覚め”の言葉にトクンと心臓が動きはじめる。
声に導かれるようにして浮上する感覚。
「炎朱!」
一際大きく直接耳に届いたその声に、瞳が開いた。
躰が燃えるように熱い。
「…コ…洸水…?」
「大丈夫か? 炎朱」
目覚めるなり突然咳き込んだ炎朱に安堵の表情を洸水は浮かべた。
暴雨の中、湖の沿岸。
殴りつけるような雨が炎朱を守るように立つ洸水。大量の水を吐き終え、少し頭がはっきりした炎朱は周囲を見渡す。
薄暗く荒れ狂った風雨と存在感が全くない村。
「一日経って、総てが変わって、何も変わっていない」
彼の説明で総てを悟る。
状況は巫女が攫われたまま、何も変化はないのだ。しかし、このままでは大雨のために湖は氾濫を起こし、村は水と共に流され姿を消すだろうというのは予想できた。
「水愛が…湖の底にいた………」
「………!」
「水珠を捜し出せば……」
起き上がろうとして炎朱がフラッとよろけたのを洸水は支えた。
「あぁ、水珠については私も調べました。まずは少し休みましょう、炎朱」
このまま雨に晒せば風邪を引くことは判りきっている。
「………うん」
スーッと意識が遠のいていこうとする炎朱の肩を組んだ洸水は彼を家まで運んで行った。
嵐は収まらない。
「どうすればいいんですか」
「それを今、考えているんだ! 言われんでも判っとる」
部屋の中を落ち着きもなく何度も往復して歩き回っている。
「お前がはっきり物事を把握せんから、このようなことが起きるんだ。なんのための神官が判らんではないか」
「巫女の水愛を犠牲にしてもいいから、今まで通りの祭典をしようといったのはあなたですよ、村長」「総て、私のせいとでもいうのかね」
村長の家での口論は先へ進まない。自分の非を認めようとはせず相手に罪を着せようと幼稚な言い争いを繰り返している。
「原因は巫女かもしれんな」
「水愛が?」
「あの娘は湖の沿岸で見つけたそうじゃないか。有り得る可能性は高いぞ」
自分は無実だと言わんばかりに、側にいない他人に原因を追求している。
「なぁ、どうだろ、主神官」
自分の意見に同意を求めて村長がそう言葉を言った時、地を裂くような轟音が響いた。
「うわぁ!」
「おぉ!」
驚きの声を上げて床に座り込む。地震のような揺れが数秒間続いた。
「ど、どこかで雷でも落ちたんでしょうか」
「そ、そうだな」
自分の言葉に対する嗔りに思えて、村長は引きつった笑いを顔に浮かべた。
――コンコンコン
突然、ドアを叩く音がした。
ビクッと二人の視線は入り口へと釘付けになる。こんな時にやってくる者などいないはずだと耳を澄ます。雨がただ戸口にぶつかっているのかと思ったが、コンコンコンという音は再び二人の耳にはっきりと聞き取れた。
ふと、もし来る者がいるのなら洸水しかいないと考え直した。祭典前の話を聞かれているのだから不思議ではない。
目配せをした二人は何げない表情を作り、村長が扉を開けに向かった。
「誰だね、あんたは……」
村長の声を聞きとって主神官も戸口に来る。
開いたままの扉の向こうには一人、黒髪の青年が立っていた。
長い漆黒の髪は腰の辺りまで伸び、中性的な美しさを彼は持っており、女と言われても頷けてしまう容姿をしていた。
「この辺に、黒髪の紅い目をしたガキ…いや、青年はいないか?」
無愛想に聞こえて、それでいても惚れ惚れとする声色で青年は彼らに問いかけた。
その彼の瞳が真紅なのに二人は気づかなかった。
第6話をお届けでーすww
裏設定暴露ネタがない><
なんかそれも淋しいねww
皆さん、バンバン先読みして下さるから、一人汗です ∑@@;
まー、そんなものですね私の発想力はww
最初に書いた小説の「逃げ」は最終でバラシマショウww
しかしこの黒髪くん(?)はどーゆー役割なのか...。
まとめて読みたい~って思うのですが
連載だと次回を待つ楽しみも得られますし
ここは大人しく次回を楽しみにお待ちしてます♪
さて、この黒髪の新キャラは『何者』なんでしょう
素直に父親なのか?
天龍なのかな?
村長ってば、何をたくらんでたんだろう~~
きになるのぉw