Nicotto Town



【小説】紫翼のジーナ~1~

『紫翼のジーナ』1-①話
原案:はじめあき
作者:しゅーひ

半月が浮かぶ湖畔のほとりに、リンは一人木陰に身をかくして小さくなっていた。
日付が変わる頃に採取する薬草が効果があるということで、夜更けになって家を出たのが間違いであった。
こんな事なら師匠に黙って家を出なければ良かったと心底後悔の念が頭を支配した。

何故、こんなことになったんだろう。
自分はただ、薬草を取りにきただけなのに。

半刻前ほどにリンはこの湖、通称女神の湖にやってきた。目的は薬草取りである。
シアナ族の娘であるリンは、他のシアナ族と同様に薬草を採取し、解熱薬や回復薬を作って生計を立てている。
湖の近くには効果の高い薬草が多く、このあたり一体は少数部族であるシアナ族の住処にもなっている。
水と薬草に愛された部族、そして湖の女神様を崇拝しているもの。
それがシアナ族であり、リンであった。

まだ17歳と未成年であるリンは師匠の下で薬草についての知識を学び、加工の技術を体得するための修行の身である。
だが半人前とは言え、10年も薬草について勉強している自負があった。
夜に外出するなと師匠から言われてはいたが、夜に薬草を取りにでかけるのは今回で3度目だ。
3度目ともなると、余裕があったのがいけなかった。
薬草取りに夢中で、後ろに人が立ってるいるなんて全く気がつかなかったのである。

「娘、そこで何をしている」

野太い声が聞こえた。
折角採取した薬草を落としそうになった。
振り向くと、夜なのに、フードを被った体格のよい男と、従者と思われる男が二人 剣を柄に手をおいている。

あまりのことにリンは声もでなかった。
フードの男が更に続けた

「答えられぬか娘よ。お前も運がない、悪いがこれからの事を人に見られる訳にはいかないのでな」

声には抑揚はなく、されど決心は覆さない意思をおもわせた。
従者の男達が剣を抜いてこちらにやってきた。
月明かりに鈍く光る剣先が、リンの血を啜ろう近づいてくる。
自分でもあまりにのん気な事に驚いたが、ここでようやくリンは気がついた。

殺される、と。

逃げなくてはいけない。今すぐここから立ち去ろう。足の速さには自信がある。動け、動け、動け。
だが、リンの意思とは反対に足はまったく動かなかった。
小刻みに震えるだけで足の裏に楔がついたような感覚におそわれた。
従者の男がこちらに近づいてくる。

「すまないなお嬢ちゃん。悪く思わないでくれ。これもガロン様のご命令でな」

ゆっくり剣を振り上げる。
その顔が月明かりに照らされた。
瞳の色が深紅に揺らいでいる。

赤い瞳はメニア族の証。リンは恐怖と同時に、あぁこの人達はメニア族なんだと思った。
同時に、こんな所に何しにきたんだろうとも思った。
湖と薬草しかないこんな田舎に自分を殺さないといけないほどの用事って何だろうと。

銀色の剣光がリンの身体を貫こうとする刹那。
大気が大きく揺らぎ、巨大な岩が木々をなぎ倒すような爆音が響いた。
リンは後ろから強く引っ張られて、そのままゴロゴロと転がって止まった。
地面と空が3回ほどひっくり返ったので頭の中に不協和音の鐘がなっている感覚がした。
頭がぐらんぐらんしていたが、何が起こったのか確かめるために身体を起こした。

先ほどまでリンがいた場所は大きくへこみ、剣をもった従者は二人ともそのへこみの中で平たくなっていた。
そして、へこみのすぐ手前に今までいなかった男が立っていた。
男はくるっとリンの方にむき

「メス!お前、邪魔だからそこでじっとしてろ!」

と大きな声で怒鳴った。
年の頃はリンとそれほど変わらない容貌だ。漆黒の髪に碧眼。そして何より目に付くのは、青に近い紫色の羽が男の背中から生えている。
羽の生えた人間なんて、この星サノアルタでは一種しか存在しない。

翼人族(よくじんぞく)。

固有数は少ないが、不思議な能力をもつと言われた優位種だ。
リンのようなシアナ族とは格が違う。
しかし、その時のリンは、種族の格や、もしかしたら助けてもらってるかも、という状況も関係なかった。

「ちょ!ちょっとー!メスって何よ!メスってぇぇぇえええ」

翼人族の男はリンの言葉にまったく耳にせず、フードの男にむかって吼えた。
「なんだか面白いことやってるなーって思ってなよぉ。この俺様も混ぜてもらおうってな!」

フードの男は頭の布をはずしながらゆっくりと翼人族の男に近づきながら答えた。
「じゃまをするな翼人族よ。私は忙しい。貴様もここで死にたくはないだろう?」

深紅の眼をした男は綺麗な顔立ちであったが、年齢がよくわからない。若くも見えるし、老獪な印象も受ける。

「は!関係ねぇーな。俺は俺のしたい事をする。きにくわねぇ奴は倒す!誰もが俺の前にひれ伏すんだよ!」

どうも、翼人族に助けてもらったようなのだが、この邪悪な顔をみると感謝の気持ちが薄れるな。とリンは思った。

アバター
2010/11/08 13:10
文字数に限りがあるので 次回も楽しみにできる・・という2倍お得感が?w
続きがあると言うことは リンは殺されないはず(笑)
そう思いながら 読み始めたw

翼人族とリンの出会いが これからどんな話に展開していくのか
楽しみにしてます♪
アバター
2010/11/08 12:09
面白そうなファンタジーがはじまりましたね♪
さくさく読ませていただいております。2000字の中でこれだけ展開が出来るなんて
素晴らしいです。それでいて、きっちり背景の紹介もしていただいていますし。
翼人さんがいいキャラクターですね。
今後が楽しみです。
アバター
2010/11/08 03:30
さっそく拝読させて頂きました
コラボ作品だったのですね♪

説明的文章はなくても、構築された世界にすんなりと入っていけましたよ~
むしろテンポが良くて読みやすいくらいですw
想像の余地を残してあるくらいの方が、私は好みだというのもあるけど^^

今後の展開が楽しみです♪
それにしても、2000字なんてあっという間ですねw
アバター
2010/11/07 23:39
おお、原案の方が別にいらっしゃるのね。
なかなか軽快なテンポでさくさく読めました。

この俺様な翼人が今後、どうデレてくれるのかが楽しみです(違
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2010/11/07 21:20
連載開始、おめでとうw
あきさんとのコラボ、とっても楽しみデスw
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2010/11/07 20:45
ファンタジー大好き!!
続きが気になるのぉ。。。
アバター
2010/11/07 19:00
小説UP、お待ちしていましたww
連載開始、オメデトウでーすww
つづき、楽しみにしていますので、よろしくお願いしますww

しかし、ジーナの性格は笑えますww←ひとりウケww
アバター
2010/11/07 18:32
長編小説 紫翼のジーナ(シヨクノジーナ)です。
1話は①、②の構成になっております。
わかりずらい事もあるかもしれませんが、
おいおい説明的文章で公表していく予定です
(大丈夫かな?)

んなわけで、これからぼんにょりとお付き合いくださいませw





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