11月自作/「山 『山と暮らす』」
- カテゴリ:自作小説
- 2010/10/25 17:18:29
二羽の鳥が、ガラス越しに話していた。
ガラスの内側にはセキセイインコのピー、ガラスの外側は、雀のチュン。彼らはいつのころからか、窓越しの友達になっていた。
雀のチュンがここに来るようになったのは理由がある。窓辺に置かれたピーの鳥かご掃除のとき、大雑把な飼い主がエサ殻を、窓を開けて吹き飛ばすのだが、鼻息が荒いのか、実入りのエサもけっこう混ざっているのだ。それを見つけたチュンが自分の秘密の食事場所として実入りエサを食べにくるようになって、いつしか窓越しにピーとしゃべるようになったのだ。
「随分、冷え込んできたよ。山も赤色と黄色になってきたし、もっと食べ物探しに精を出さなくちゃならない時期だね」
とチュンが言う。
「僕は寒くないんだけど?もっと食べていいのか、うらやましいなぁ。僕は太りすぎでエサの量を減らされているんだ」
とピーが文句を言った。減らされたエサに実入りのエサが残ってること自体、エサにひっ迫していないという感覚がピーにはないのだ。勿論、チュンもそんな事情は知るはずもない。
「確かに君は、充分丸いから、寒くないのかもしれないね」
とチュンが納得した。
「ところで、山が赤色と黄色になるって言ったけど、黒とか紫とかピンクにはならないのかい?」
「紫とかピンク!?春から夏は緑色、秋に赤と黄色になって、冬は真っ白って決まってるじゃないか」
チュンはピーが何をいってるのか、わからなかった。
「いや、ピンクや紫や黒や赤、毎日変わるよ。そして、エサと水を取り替えてくれるんだ」
「山にエサや水があるのはわかるけど、山がエサを持ってくるのかい?」
「うん、動くんだ。だから気を付けないと踏まれてしまうから、山も気を付けているし、僕も気を付けている。それでも一度、山が、僕を踏みそうになって、危うくぼくは死にかけたこともあるんだ」
「山が動くのを見たことはないなぁ。しかも毎日色が変わったら、目印に困るなぁ」
チュンが気の毒そうにピーを見つめた。
「お互い、よくわからないが、大変なんだね、あ、ピー君の後ろに気配がするから、僕は行くね、また遊びにくるよ、じゃあね」
ピーがさよならをいう間もなく、チュンはあっという間に飛び去って、「山」がのっそり入ってきた。かごをあけてもらうと、ピーは喜んで今日は紫色の山に飛び乗った。
「ただいま」
「ぴっ」
山の中腹の「肩」という休憩所にいれば、山に踏まれる心配はない、ピーは今日も大好きな山の上でご機嫌だ。
(おわり)
気がします。
でなかったら、お話でなく前回の「四季のない世界で」のような
単調な感じになったと思うんです。
「会話」はリズム感が出ていいですね。
てんにゃさん、初めまして。
初めて読んでいただいて感謝です。
これから何度か読んでいただくとわかると思いますが
基本「いんこ話」しか 書けない変人です(汗)
『山』~
何て素敵な、置き換えでしょう。(あ、私は山って言う程、大きくないから丘になるのかな?)
ピーちゃんが持つ不思議と、チュンが待つ不思議。
毎日、色が違う『山』というピーの感覚。面白かったです。
生き抜く、という共通点を持って書かれているのが面白かったです。
なごめました。。^^
野鳥とインコにとってそれぞれの『山』が、住む世界の違いを浮き彫りにしているのが良いなあと思いました。しかしどちらにとっての『山』も、生きていくために必要不可欠な大事なものであるという共通点があるのですね。
鳥同志の会話という形で「お語」にすることが
できました。
窓ガラス一枚の別世界、飼われいんこのピー
になごんでいただけて嬉しいです。
一方でcheruさんご指摘の通り、切ない気持ちで
書きました。生きていくうえで厳しいのは、チュン
の方ですから。
でも、秘密のエサ場も確保したチュンは、きっと
厳しい冬をのりきってくれると思います^^
切なさを含んで それでいてとても面白いですね。
「知らない事」を、知っている立場から表現するのは
とても難しいと思います。
巧いなぁと思いました。
確かに、鳥からしてみれば飼い主は聳え立つ山ですね。
暖かな部屋で、飼い主の肩から頭へ山登り。
寒い冬も楽しげで羨ましいっ!
ぼうぼうさんのお話はいつも、登場鳥物に深い愛情が感じられて、ほっこりします。
ぼうぼうさんのお話を読むと、凄くインコを飼いたくなります。
ニコペットで登場しないかなぁ・・・なんて思ってしまいます。
upしましたのでご確認を
http://novel.fc2.com/novel.php?mode=tc&nid=80695
飼い主さんが「山」!エサをくれる山だと思っているのがかわいいですね。
そして、最後の「ぴっ」というのがおそらく飼い主さんにとっては
たまらなく可愛いのだろうなあ、とニヤニヤしてしまいました。
どこか童話のような感覚を思い起こさせる物語ですね。
ピー君の山は希に危険な時はあっても嬉しい山。対するチュンは実生活の四季の山。対照的な二人(二匹)のそれぞれの感覚が伝わってくるのが微笑ましい気持ちになりました。^-^
飼い主は『山』なのか~w
まぁ大好きだから飼い主さんも報われるよねw
山の色で思い出しましたが、寒いトコに住んでいる頃、三月になったころ、真っ白だった山が真っ黒や茶色になったかと思ったら、すぐに輝く黄緑色に色づいていくのに、三度だけの春でしたが、その景色に感激しましたっけ。羨ましいです。
たしかに山
踏みつけてしまう危険もありますよね
人って言うのはわかったんだけど…色の意味が・・わかんなかったんだぁ。
最後に笑っちゃったよヽ(^。^)ノ
ふふふふ・・・肩だったんだぁヽ(^。^)ノ