■近代文藝之研究|研究|歐洲近代の彫刻を…(5)
- カテゴリ:その他
- 2010/10/07 00:49:52
■近代文藝之研究|研究|歐洲近代の彫刻を論ずる書 第二(3)
第一圖『マーキュリー』の作者トルワ゛ルゼンは、デンマーク第一の彫刻家でまた歐洲近代の彫刻界に一期を劃する人である。彼れと國を同じうする評論家今のブランデズ氏が、壯時はじめて巴里に出た際に家郷へ書き送つたといふ文に「先づ感ずるは、フランスにトルワ゛ルゼン無しといふことに候、デンマークは彼れあるによつて無上の寳を有し候、我等は少なくとも三四の點に於いてヨーロッパ中の第一流國たりまた永くしかあるべきこと爭ふべからざる眞實と存じ候」といつてゐる。此の年少文人に取つてトルワ゛ルゼンといふ名が如何に故國の誇りであつたかは之れで察せられる。
トルワ゛ルゼンの先輩にイタリーのカノーワ゛がゐるが、二十年ばかりの相違で、二人ながら十八世紀の末から十九世紀の初めに亘つた人である。而して其の大成した彫刻の風格は謂ふクラシシズムであつた。蓋し當時は繪畫に夫のフランスのダヰ゛ー出で、ルイ家傳來の繁縟なロココ趣味に反動して、冷靜沈重なクラシカルの趣味を復興した時である。
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*註1:作者
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg
*註2:彫刻
「彫」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tyou_horu.jpg
「刻」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/koku_kizamu.jpg
*註3:近代
「近」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註4:評論家
「評」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hyou.jpg
*註5:ブランデズ
ゲーオア・モリス・コーエン・ブランデス(Georg Morris Cohen Brandes/1842年~1927年)のこと。デンマークの文芸批評家。『一九世紀文学主潮』『ロシア印象記』等。
*註6:家郷
「郷」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/gou_kyou.jpg
*註7:送つた
「送」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sou.jpg
*註8:文・文人
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg
*註9:相違
「違」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註10:繪畫
「畫」の俗字体(一説に本字とも)。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ga_kaku.jpg
*註11:フランスのダヰ゛ー
ジャック=ルイ・ダヴィッド(Jacques-Louis David/1748年〜 1825年)のことかと思われる。フランスの新古典主義の画家。新古典主義を代表する画家。
なお、原本では「ダヰー」とあったが3行後には「ダヰ゛ー」との表記があり、「ダヰー」は誤植と考え、改めた。
[作品参照]⇒http://commons.wikimedia.org/wiki/Jacques-Louis_David
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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1
もう10月ですね。早くも半年ですよニコ始めて・・ふふふ
じゃ寝よう^^