Nicotto Town


-full coller program-


機動戦士ガンダム 公国の威信15

U.C.0087 5.18.


ヴァレンスィアは安全な宙域へと辿り着いたが、カレンの容態は日に日に悪化していった。
脈は弱く、肌も蒼白で冷たくなりつつあった。このままの状態が続くと危険だと、
専属外科医のユーリ・フランコが判断し、旧ジオン軍の一大基地だったソロモン近郊の
医療基地、マライタ島での手術を行うことになり、ヴァレンスィアは進路をそこに向けた。
その際、レンはずっと、カレンに付き添って、その小さな手をぎゅっと、握り締めていた。
これっぽっちのことしかしてやれない自分の不甲斐なさを呪いながら。
自分は今まで、カレンに何をしてやれただろうか?
答えのない疑問が、レンの頭にこびりついていた。
不意に、その疑問が、悪い野性の勘に取って代わった。
レンは、ブリッジの上部に張り付いているちっぽけな虫ような
ドーム型の観測室の梯子を上り、据え付けてある光学双眼鏡を両目に押し付けた。
そこには10機ほどの黒ずくめのMSがこちらに向かってきている姿が映っていた。
舌打ちしながら、レンは梯子も使わずに観測室から飛び降り、ブリッジに駆け込み、
そして叫んだ。

「大佐!敵襲だ!2時方向に10機!たぶんステルス!」
「マジかよ…ッ!すぐ出れるか!?」
「了解っ」


レンは2番ハンガーへ向かった。
敵は少数だったので、発進したのはレンとジョゼフだけだった。
この小さな戦闘が、レンにとっては生涯忘れられない物になることを、
彼自身は自覚していなかった。敵機はおそらく新型の偵察機だと思われた。
レンは経験から、このような強行偵察機は武装が薄く、機動性が高く、
装甲が頑丈だと踏んだ。しかし、その自慢のはずの機動性もケンプファーの前には
なし崩しになっていたため、一方的な戦いになっていた。そして、レンは感じた。
機体の差、パイロットの差だけではないような気がした。
なぜか相手の動きがオドオドしているような気がした。
こちらのことを深く知っている訳でもないのに。
最後の一機がジョゼフの手で破壊されると、彼はこう言った。

「ここのとこお前の動きにゃ神々しい恐ろしさが
 かかってきたなァ・・・」


レンはハッとした。大戦のときはただ国のために戦っていたが、今は違う。
たった一人。カレンとの強い絆が生み出す、
衝動に似た直感に突き動かされて戦っていた。それがきっと、霊的な力を創りだし、
相手に恐怖心を抱かせるのだろう。
ヴァレンスィアに帰還していくケンプファーの姿は、いつもより力強く、逞しく見えた。

アバター
2010/09/19 10:31
すげーMANIAC!

ガンダム好きだね~



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