Nicotto Town


「時のかけら」


創作小説「ソハコサ国の勇者」8

「平行世界シリーズ」本編

 ソハコサ国の勇者



第8話

 しかし、その刃は彼には全く届かなかった。
 妙子がその男の不意を突いて、足をつまづかせたからだ。
 勢いよく床に突伏した男の剣は、床を滑ってエカーチェフの足元へ。
「さすがですね、妙子さん」
「当たり前よ」
 始めは逃げ回っていても結局は人間、時と場合で動いて成長していくものだ。
 そして、すぐにエカーチェフの元へと逃げる。
 これも今までの経験から身に覚えたモノ。
 危険になれば逃げるが勝ちよ。総て彼に押し付けて。
 床に転がった剣をエカーチェフは拾いあげた。男達の間に緊張が走る。
しかし、
「あ」
 小さく彼が呟いたと思うと、たどたどしく拾った剣をまた床に落としたのだ。
「何してんのよ」
「ははは……手が滑ってしまいました」
 ちょっと照れた笑いを見せながら、また拾おうと屈んだところ。一人の男がまたしても切り込んで来た。
 しかし、次の瞬間にはもう男の剣を剣で受け止めていた。高らかな金属音が響く。
「な!?

「隙をついたと思ったでしょ?」
 しっかり握られた剣に力を込め、男の剣を跳ね飛ばす。
 今まで妙子が見てきた戦いにおいても彼とは思えない程、上手に立ち回りをしていた。
「誤った《魔導》をすれば、怪我じゃすみませんよ。それは身にしみて判っているでしょ?」

 彼の笑顔の迫力に押されて3人の男は尻込みしたように動けなく戸口に立っている。
「さて、あなた達ならこんな事をした理由を話してくれるのでしょうか?」
「知らないっ」
「ただ、お前を捕らえるよう、言われただけだ」
「捕らえる?」
「何のためによっ」
 エカーチェフと妙子の疑問には答えずに、再び剣を振り上げた男たち。

エカーチェフは掌に小さな〈魔方陣〉を描くと、彼らの元へ歩み寄り男の額へと掌を押し当てた。
ジュッと一瞬で水は蒸発し、男達はうつろな瞳で無言のまま床へ座りこんだ。
「…何したの?」
恐る恐る聞いた妙子に自らの掌を見ていたエカーチェフは視線を上げて答える。
「邪魔にならないように、眠ってもらったんですよ」
 小さくため息をついて死んだのか?と心配そうに見ている妙子に説明をする。
「まだ≪魔導≫の途中ですから、あまり時間をかけられません」」
「そういえば、そうだったわね」
 魔方陣の真ん中には箱に入ったトカゲがおろおろしながら様子を見ている。
エカーチェフは軽く笑うと再び魔方陣に向き直った。
「さぁ、続きでもしましょうか」
 何もなかった床にぼんやりと円陣が浮かび上がり、光を放っていた。


   *   *   *   *   *

「これで終わった~~
!!

 妙子は崩れるように座りながら声を上げた。
 小さな街が本来あるべき場所に戻った。
「そうですね」
 ちょっと息を乱したエカーチェフがそれに相槌をうつ。
笑顔で喜びあう住人達の姿を見て自然の笑みを浮かべる。
〈召喚魔方陣〉もなくなり歪みが正され、街全体を包み込んだ巨大な〈魔方陣〉はエカーチェフが媒介へと使った水晶を破壊したことで力を失い消え去った。
もうこの街が消えることはないだろう。
 任務完了っというわけだ。
「エカーチェフ殿、この後どうします?」
青年魔導士のフレンが声をかけてくる。
「……えーっと…国にもすぐ報告しなきゃならないんですけど……とりあえず…一休みたいですね」
 《魔術》を使い果たした上に、体力も使い切ったように見えるエカーチェフに代わってテキパキと動いていく。
「報告、お願いしてもよろしいですか?」
「はい。報告は私がしますので、休んでてください」
そう言ってバタバタと街中を走っていくのを見て、エカーチェフと妙子は人の少ない場所へと移動した。
「……なんかあいつ、エカーチェフの事を見下してない? 絶対、自分に都合のいい報告とかしてそう……」
「そうですか?」
とエカーチェフは苦笑する。
 広場が見渡せる建物の一角に腰を下ろし、彼は大きなため息をついた。
そして周囲に誰もいない事を確認してから、おもむろに口を開く。
「ま、そのほうが好都合なんですけどね。それに彼の名誉回復のチャンスを与えてやらないと…」
おっとりした口調は消え去った彼がそこにいた。
床に座りこんで溜息をついたエカーチェフを見て、妙子はアラ?と特別驚いた感情を見せずにあきれた声を出す。
「……相当、疲れたのね」
「あれだけ立て続けに大きな《魔導》を使えば誰だって疲れるよ。…妙子さん座らないの?」
 屈託のない笑顔ではなく、含み笑いの表情で見上げた顔は今までのエカーチェフとは雰囲気が全く違っていた。
 心の底から本当に溜息をつき、妙子はエカーチェフに言われるままに床に腰を下ろした。
「……気付いてたんでしょ」
と、蒼い瞳が笑った。

【続く】


てことで、第8話ですーっ

突然ですが……次が最終回ですー(笑)
ヽ(^o^)丿ヽ(^o^)丿ヽ(^o^)丿ヽ(^o^)丿ヽ(^o^)丿
魔導で戦うシーンが少なくて、ごめんねぇっ


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2010/09/18 23:41
コメントありがとうございます
雫さん。
 関係は…友人のままかなぁww お互い別に恋人ができる予定ですので。

かめなんすさん。
 ありがとうございますっ 長いですので、ゆっくり読んでくださいませ。
友申、OKですよーん よろしくお願いしまーすww

しゅーひさん。
 外伝はありまくりです。
 ブログに載せているのも過去にさかのぼれば5話ほどありますww
これからもたくさんですww 短編読みきりとして読めるようにしてありますっ

みーちゃんさん。
 最終回、UPしました。
 楽しんでもらえたら嬉しいですww

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2010/09/18 16:20
むむむっ! 「・・・気づいてた?」って。。。!?!? 最終回 どんな結末で締めくくられるのか

楽しみです♪♪ またまた失礼しました~~~~~>< 
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2010/09/18 08:14
うーむ
かえってエカーチェフが判らなくなってきた。
え?
次で終わっちゃうの?
外伝も、あるんだよね?w
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2010/09/18 01:13
すごい、本格的なんですね。
今度、じっくり読みにきまーす。


あきさん、友申しました。よければお願いしま~す。
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2010/09/17 21:49
エカーチェフと妙子の関係はどうなっていくのか(✿ฺ-ω-)

えΣ 次最終回? 寂しいなぁ...
妙子の戦闘シーンは...!




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