Nicotto Town


フリージア


瞳の中の少女…7

「それにしてもおまえってモテるんだな」
 桂木は場を和ますつもりで言ったのか嫉妬をもらす。仙道君と僕は、気まずい顔で桂木を見た。
 「ことのが事件と直接には関係ないかもしれないけれど、何かの役に立つかもしれないと思って。だから君の叔父さんにそれとなく伝えてほしいんだ」
 「わかった。僕が責任を持って伝えるから、安心して」
 「ありがとう」
 仙道君は厳しい顔を崩さず振り向き、自分の家の方向へと歩き出した。僕は桂木と顔を見合わせた、そして双方が不思議な初対面にどっと疲れが出たようだった。
 
 桂木は聞く。
 「本当に関係あると思ってるのか?」
 僕は桂木の問いに答えられないでいた。少なくとも桂木はこの事実は事件とは関係ないと感じているようだ。それに、このことを叔父に話しても取り合ってくれない可能性が高い。だが、仙道君に告白してきたという被害者4人の女生徒、僕は何かがあると感じ取っていた。
 そして、こう考えた。
 『仙道君にストーカーがいるのではないか?』
 これは、考えられる範囲だと思う。
 「桂木。仙道君の身辺を調べてみないか?」
 「えっ…おいおい、ちょっと無謀なんじゃない?それにおまえの叔父さんに捜査してもらうんだろ?」
 「もちろん叔父さんには言うよ…でも犯人は僕らの近くにいるかもしれないんだぜ」
 僕は不謹慎にも笑って見せた。その笑顔に桂木は引いていた。
 「探偵じゃないんだからさ…それにおまえがあの推理劇で解いた事件とは訳が違うぞ」
 去年の秋、課外学習という名目で1年生全員は俳優さんたちが舞台で演じる推理劇の観劇した。

 それは殺人事件が起きる推理編、そしてその場の観客それぞれに推理をし、記入用紙に犯人とトリックなどを書き提出、その後に解決編が演じられるというものだ。
 そして、その犯人とトリック、犯行動機などを全部当てられたのは僕だけだったと言うことがあったのだ。
 僕はそれ以来、自分の推理力に酔っていた節がある。

 『何かの謎が解るほど、楽しくて面白いものはないと』

 僕はどうしようもない子供だった。仙道君の話で、ほんの少しの光が見えただけなのに走り出そうとする。それが本当の解決への出口なのかも確認できていないのに。
 だから、桂木の忠告にも怯むことはなかった。
 「やってみよう、僕たちだけで…」
 不思議なほどに高揚し、桂木に僕の考えを言うことも忘れていた。仙道君のストーカーの犯行だとを言っていれば、すぐにでも僕の話に乗ってくれただろうに。




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