創作小説「TONE」6/6
- カテゴリ:自作小説
- 2010/09/05 22:37:34
「TONE」
最終話
ライブハウスから吐き出された夜の町。
近くにあった遅くまでやっているファミレスでちょこっと腹ごしらえ。
それは皆も同じ考えらしく、見るからにライブに参加していた人達がいくつものテーブルを占拠していた。
「よかったね」
「うん、楽しかったね」
妙に私もテンションが高い。
自然と笑む表情は周囲も同じ。
それでも時間が経つにつれて戻ってくる現実感。
「もう夏だね」
「受験生の夏だね」
「うわ、思い出させないでよ」
「どうするの?」
「一応、進学希望だけど、どこにするかは決めていない」
「私は専門学校に行こうかな」
「えぇ!? 何の専門なの?」
「ふふ、ちょっとねぇ」
照れたように含み笑いする友達に、ほんの少し置いて行かれた気分。
なりたいものや、やりたいものはまだない…だからとりあえず進学。
夢中になれるものは見つからない。一生懸命何かをすることを、面倒だと避けてきた気がする……。
でも。
今日のライブ。
それは彼らの真剣な想いから生まれたものだと気付いたから。
自分のしたいようにするためには、手に入れなきゃならないモノがある。
よし、私は未来の私のために今出来ることをするぞ、なんて。
数ある選択肢を今サボったことで狭めたくないから。
とーぶんは受験勉強だ。
「大学の夏休みって…長かったよねぇ…夏の後半、ライブツアーがあるかも」
決意した私に友達の悪魔の囁き。
「……前向きな息抜きは必要でーす」
逃避ではなく、もっとやる気になれるための時間なら。
帰ろうと席を立ったら、新しい客が入ってきた。
女の子の二人連れではあったのだけど……
「あ! ユウのバイオリンの彼女!?」
思わず言ってしまった声に、店内の皆が振り返る。
あ、マズイ。
思わず口を塞いだけど出てしまった声は戻らない。
ちょっとした騒ぎの中、あわてて店をでた。
「ごめんなさい」
店に入る邪魔をしてしまった彼女にそっと謝る。
気にしないで、と彼女は笑顔を見せる。
でも、あ、否定はしないんだ。
そして。
「バイオリン、入賞おめでとうございます。すごくよかったです!」
その言葉に驚いた表情をした彼女だけど、
「ありがとう」
謙遜しない素直な笑顔に、同性ながらかわいいなと思ってしまった。
自分であることに誇りを持っている表情。
カッコイイよね。
「何? どういうこと?」
「内緒ー」
友達は不思議がったけど、これは私だけの秘密なのだ。
いつになくスッキリとしたイイ気分で帰路につく。
今までとは何かが違う、新しい夏が、はじまろうとしていた。
【END】
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
てことで、こんばんは。最終話をお届けしました。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
明日は「TONE」の前に描いたモノの「Piano」を載っけたいと思いますっ
昨夜(今朝?)打ち込み終了しましたので。
散文詩的な短いものです。
裏設定もついでに書いちゃいますっ(笑)
久しぶりに読み返して、こんなのワタシ書いてたんだ…などと思ってしまいました(笑)
気に入らない箇所がいくつかあったので、少し直しましたが、期待せずにお待ちくださいです。
1000文字ほどの短編。
裏設定を暴露しないと、話の内容がわかんねーって感じですっ
ユウトくんのバイオリンの彼女、とかね。
裏設定まで!楽しみです@@