■近代文藝之研究|研究|歐洲近代の繪畫…(55)
- カテゴリ:その他
- 2010/09/05 06:09:19
■近代文藝之研究|研究|歐洲近代の繪畫を論ず 十二(7)
最後の線畫といふことは、日本では特殊の意味を持つて居て、また特殊の問題を殘してゐるがそれは今こゝで論ずべきで無い。線畫としての日本畫が洋畫に及ぼした影響は、強いて求めれば、彫畫(Etching)鉛筆畫、ペン畫等の上にあらうが、併し是れは多く説く程ではあるまい。むしろ純裝飾畫の上に其の勢力を振つて、夫のアール、ヌーヴォーの如きものを生ずるに至つた。是れが最も顯著な事實である。彫畫などでは、線のために線を引いて針の力を見せると主張する人もあるが、併しそれは畫家として最も偉大な線を彫ると稱せられるイギリス在住のレグロー(A.Legros)の作の如きですら、其の雄健な線が萬すぢのやう蔓つてゐるに拘らず、最後の印象は矢張り其の圖象の生きた姿である。是れあるが爲めに其の線も生きて來る。若しあれが單なる線條のみの組合せであつたら、幾ら其の線條が雄健でも、要するにアール、ヌーヴォーの模樣以上に卓出することは出來ない。
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*註1:線畫・日本畫・洋畫・彫畫・鉛筆畫・ペン畫・裝飾畫
「畫」の俗字体(一説に本字とも)。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ga_kaku.jpg
*註2:影響
「響」の旧字体、もしくは正字体だが原本画像不鮮明で確定できず。
旧字体は、
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kyou_hibiku.jpg
正字体は、
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kyou_seiji.jpg
*註3:強いて
「強」の俗字。旁が「口」+「虫」。
*註4:併し
「併」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/shikashi.jpg
*註5:説く程
「説」の旧字体。旁は「兌」。
「程」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hodo_tei.jpg
*註6:レグロー
ルシアン・アルフォンス・ルグロ(Lucian Alphonse Legros/1837年〜1911年)のこと。フランス人画家・エッチング画家。
[作品参照]⇒http://www.artcyclopedia.com/scripts/r.pl?R043+443
*註7:生きた姿
「姿」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/shi_sugata.jpg
*註8:要するに
「要」の俗字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/you.jpg
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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1
思ってたよ・。。・へーへー・トリビアの泉ですな
でますよ・へーへーが・・物知りだ^^