Nicotto Town


「時のかけら」


創作小説「TONE」4/6

   「TONE」  

第4話

 みんな今日のライブ、いつ知ったの?」
 会場内から
「お昼頃ー」
「夕方にー」
と呼びかけの質問に大声で返す声。
「お昼頃の人ー?」
と手を上げると半分くらいの人が同じように手を上げた。
 隣の友達も手を上げてる。
 私は…その友達の情報で夕方前くらいか。
「ふーん…」
 と会場を見渡したユウは視線をマキに向けた。
 そして一言。
「俺が知ったのは、ライブが始まる2時間前だったよねぇ?」
「うん、そうだね」
 あ。
「それも楽譜を渡して、ライブまでに編曲してね、なんて」
「ユウくんのこと信じてるからぁ」
 とびっきりの笑顔で話す二人のかけ合いに会場から笑いが生じる。
 なんか思い出した。
 夕方、すれ違った時の電話。
『今からコレを…って2時間しかないじゃないですかー!?』
 すぐ側で聞いたあの声って……。
「それでもほぼ完成させる所が、愛してるよユウくん」
 きゃあと怪しげな黄色い声。
 おいおい。
「学校を卒業したら、俺の所に永久就職してね」
「ヤダ」
 即答するユウに笑顔で返し、マキはステージの中央に戻ってくる。
 マイクをスタンドにセットし直して、
「出来たての新曲、いくよ」
 真正面を向いた表情は笑いを収めた鋭い瞳。
 重低音のリズムに激しいギターのイントロ。電子音が響き、マキの艶めいた声が重なる。
 あんなに爽やかな声が曲が変わるだけで何でこんなに怪しく色気を感じる声になるのか。
 音に合わせてマイクスタンドを伝う指が妙に艶めかしい。
 次曲へいくための冗談のように話していたが、本当に2時間前だったんだね。
 2時間でよくこんな風に編曲したね、ユウトくん。
 電話に向かってのあの驚きの声を聞いた私としては、尊敬の思いだ。
 そんな感想を頭の隅で思いながら夢中で身体に入り込んでくる音を感じていた。

「これ以上やったら、俺の声がつぶれちゃうからもうすぐお開きね」
と汗だくのマキが宣言する。
 ブーイングの嵐と“つぶしてみてー”との無責任な叫びにまた苦笑い。
 時計を見れば、始まってから2時間近く経っている。
 ちゃんと健康管理をしたライブじゃないから仕方ないかとも思うけど、やっぱりもっと聞きたいと思ってしまうファン心。
「ここのライブハウスってさ、ジャズもやるんだよね」
と突然話を変える。
 どういう意図なんだろうと不思議に思うと、ステージ横にあった黒い布を引っ張った。
 様々な機材に場所を取られ、所狭しと横に退けられていた物体

……グランドピアノが布の下から、現れた。


                            【続く


   ☆   ★   ☆   ★   ☆   ★

第4話をお届けします。

TONEのイラスト、ココ↓にUP。
http://www.freeml.com/ep.umzx/grid/Photo/node/PhotoEntryFront/user_id/46975/file_id/107290
イラストは色を塗る前なので、モノクロです。

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2010/09/03 21:55
結構時間が過ぎるのがゆっくりなんですね@




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