Nicotto Town


「時のかけら」


創作小説「TONE」3/6

 「TONE」 

 第3話

 真っ暗の中、中央に人影が現れた。
 きゃあーと女の子達の歓声(叫び)があがる。
 その声には“これで別人だったら許さねぇ”との殺意めいた思いも感じられて…もちろん私も込めさせてもらったが。
「こんばんは~~」
と間抜けした呼びかけに一瞬沈黙が訪れるが、妙に聞き覚えるある声に、一気に会場内が熱を帯びた。
 スポットライトに照らしだされ、彼が闇の中に浮かび上がるとまたしても歓声(おたけび)。
「いやー! 本物ー!!」
の声にウケて大笑い。
 イタズラっ子のしてやったりという笑みが、彼“Fly View”のボーカル“マキ”の口元に浮かぶ。
「突発的なライブにようこそ。今日は日頃、歌っていない俺のストレス解消ライブです。俺が楽しむためのライブです。よって…」
 ギター音が鳴りドラムスティックのカウント3つで始まったイントロ。
「……ついて来れる奴だけついて来い!」
 始まった曲は知らない曲だった。
 でもそんなのは全くおかまいなし。
 ノリのいいリズムと爽やかな歌声だけで自然と体は動く。
 次の曲…も知らない。
「コレ、インディーズ時代の曲だよね」
 後ろから知らないお姉さん方の声が聞こえ、納得。
 マキが楽しむためのライブだし。
 本人の声が聞けたら…なんて数分前まで思っていたくせに、どんどん欲が出てくる。
 そんな思いが伝わったのか、3曲目はメジャーのアルバム曲。
 誰もが耳にしたことのあるイントロと同時に舞台に灯りがつく。
 ギターの“タキ”とドラムの“シンジ”の姿がよく見えるようになり、歓声と共にひときわ テンションがあがった。
 マキの口から出た言葉がメロディに乗る。
 会場を埋め尽くすファンの皆も口ずさむ。
 でも。
 なんか物足りない。
 みんなも気付き始めている。
 Fly Viewがテレビで歌わない理由。
 それは確か……。
 曲のサビを歌い終わり間奏に入った所で、
「あぁ――!!」
 マイクを通した大音声でマキが叫んだ。
 何事だと静かになった会場の中、音を抑えたギターとドラムはそのまま演奏している。
「そう、忘れてた!」
 大げさな説明口調。
「遅れてきたヤツ忘れて、先に始めちゃってたよ」
 ニヤッと笑う視線の先がステージそでに向けられる。
 注目の中、現れた一人の青年は何事もなかったように空いていたキーボードの前に、立った。
 赤く染まった前髪が顔を半分隠して表情が見えない。
 ザワザワドヨドヨざわめく会場など無視して、ドラムが再びカウントを取った。
 重なった音。
 先ほどと同じ曲なのに何かが変わった。
 マキが歌わない理由。
 それだけで、皆が納得させられた。
 本物の“Fly View”の音で。
 そのままの勢いで数曲をこなし、マキは用意されてたペットボトルの水を飲み干す。
「一応メンバー紹介しまーす」
 舞台の電飾がスポットライトに切り替わる。
「一番つき合いの長いギターのタキ」
 ギターを激しく掻きならして笑顔を見せる。
「盛り上げ役は任せろのドラムのシンジ」
 短い黒髪を振り乱して勢いのあるリズムを叩き出す。
「んで…存在さえ怪しまれている、まだ学生のシンセ・キーボードのユウ」
 きゃあと一層の歓声が会場に響き渡る。
「今日は俺も久し振りに会ったのでいろいろ絡んでみたいと思います」
 マイクを持って行ったマキに対し、無表情に視線を動かすだけのユウ。
「…今日は機嫌が悪そうだねぇ」
 苦笑するマキの言葉にタキとシンジは吹き出し必死で笑いを堪えている。
「学生だからと出て来ないなんて、わがままで生意気だと思っていらした皆様にあいさつ」
 冗談めいて言ってる言葉だが、しっかり過去形で現しているとこが皆の感情をよく見てる。
 渡されたマイクを持ったユウだが、マキに向けた表情とは一変して笑顔になる。
 それがまた年上のお姉様方にはかわいくて溜まらないだろう。
「シンセ担当のユウです。今日は突然のライブなのにこんなに多くの人が集まってくれてありがとう」
 きぁあーと黄色い声援が飛ぶ。
 うん、でも、あれ?
 どこかで聞いたことなかったかな、この声。


                              【続く】


   ☆   ★   ☆   ★   ☆   ★

てことで第3話目です。

よろしくお願いします。

アバター
2010/09/03 19:12
くそっ、面白いんだZE☆((やめなさい
アバター
2010/09/03 00:46
おおお・・・早く先がよみたいです><




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