Nicotto Town


フリージア


叶わぬ願いはもういらない…15

 なんの前触れもなく、駐車場に入ったので少しびっくりしてしまった。
 怖いという気持ちが心を占める。
 謝るだけでよかったのに、夢の話までしてしまって。ルミが身構えてしまったら、せっかくの会話も途切れてしまうのに。
 だが、それは取り越し苦労だと分かる。
 「二人とも同じ気持ちだったんだね。私も成二に謝りたかったから…ごめんなさい」

 それからファーストフードに入りハンバーガーを食べながら懐かしい話を咲かす。ロマンチストな感じではなかったが、フランクな感じがより懐かしい話を彩った。
 ルミといろんな話をする、付き合っていた頃の話や新しい仕事のこと、出遭った時のこと。
 僕の胸が高鳴った。それを悟られまいと必死に堪えたが、顔に常時笑みが出てしまうのも正直忘れてしまう。
 数時間が経ち、ルミは腕時計を見た。
 「今日はこれで帰るね、明日また仕事だから」
 車に乗り僕の家まで送ってもらう。ありがとうと言い、ドアノブに手をかけたときだった。
 「また、会えるかな?」
 ルミの怖々した弱々しい声だった。楽しい会話に水を差さないように遠慮したのだろう。
 「もちろん。そうだ、携帯の番号を…新しくなったから」
 「うん!」
 恥ずかしそうに、それでも元気よく答えてくれたルミ。二人は番号とメールアドレスを交換した。
 「連絡するからね・・・・今日は話せて良かった」
 「ああ、またな」
 僕は車から出る、車内のルミは笑顔で手を振っている。小気味よく耳につくエンジン音を奏でて、ルミの乗る車は走り出した。
 走り去るテールランプをいつまでも見ながら、外の空気をめいっぱいに吸い込んだ。
 空を見ると綺麗な月が出ている。僕はそのぼんやりとした月明かりの中、『おっしゃ』と気合を入れて家に入った。

 軽くシャワーを浴びる。誰もいない居間でソファーに座り、しばらくぼんやりとする。頭が真っ白で何も考えられないとはこのことだ。有りえない事が起こって心が鳴っている。自分の鼓動しか聞こえない状態、その状態がなぜか心地よかったりする。
 「…会えたんだな」
 程なくして頭の中が落ち着いてきて自分の部屋へと戻った。携帯を握り締め登録した画面を見た〔野川 ルミ 090―××××―××××〕
 携帯電話を見つめこれからのことを考える。これからまた付き合ってくれるのか?それとも友達で終わるのか。
 もし付き合うことができるなら。そう思うとだんだんと調子に乗ってきて、付き合った時の情景がどんどん頭に浮かんでくる。

 夜中、一人で盛り上がる。これからやらなければならない事が沢山できた。
 ピピピピピピピ。
 携帯電話が鳴った。表示画面には今しがた登録し終わった、ルミの名前が出ている。無事に家に着いたのかなと推測し、通話ボタンを押した。
 「もしもし」
 「成二?今家に着いたよ」




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