Nicotto Town


フリージア


叶わぬ願いはもういらない…13

「もしかして…コンパに来たのか?遅れてくるのってルミだったのか?」
 戸惑いながらも声が出た。
 「成二と同じ大学だって聞いてたから、まさかとは思ったんだけど……」
 二人は不思議そうに見つめ合った。でも僕は次第に事の重大さに気が付きだしていた。そう思ったら僕はとっさに謝っていた。
 「ごめん、俺……ルミが来ることを全く知らなくて……」
 「…」
 戸惑っている様子のルミを見ると、僕と会う事が嫌なのかもしれないと考え悲しい気持ちになった。僕の問いかけにルミの声は無い。
 酔いは一気に醒めていた。
 「ルミはとりあえず中に入れよ。俺はこのまま帰るから」
 「…」
 「心配すんな、俺の友達には後で電話しとくからさ」
 「…」
 ルミの沈黙は続いた、その沈黙は怖かった。僕と喋りたくもない、やはりそう思っているのかもしれない。彼女に不快な思いをさせている。また罪悪感がぶり返した。
 「じゃ…」
 僕はいたたまれなくなり、たまらず歩き出す。
 「待って」
 彼女は僕を止めた。予想外の声に心臓が音を立てだした。動揺が全身に伝わる。
 「久し振りに会ったんだからなんか話さない?」
 その言葉に声が出なかった。久しぶりの彼女の声は耳の奥に響き渡る。懐かしい声。
 「どうせなら二人でどっか行こうか?今日のコンパあまり気乗りじゃなかったから、ちょうどいいかも」
 「え?でも…」
 どんどんと予想外のことが起きて訳が分からなくなったが、ルミに会いたかったことだけはハッキリと目的として脳の中によぎる。
 「私、車で来てるからドライブしながら話さない?」
 「…ルミがいいのなら」
 みんなは楽しく飲んでいるだろう。3対3なのだから、別に支障はないはずだ。僕は木下に電話し、大まかな事情を説明した。木下は了承してくれる。
 急な展開に戸惑いながらも、僕とルミは車の置いてある駐車場へと向かう。
 とりとめのない話をしようと心がけた、ちゃんとした話は車の中でと思っていたから。
 「車で来たってことは今日は、飲まないつもりだったのか?」
 「そうね、私あまりお酒得意じゃなかったでしょ。コンパが終わったあと、彼女たちを送る約束だったんだけど、納得してくれたから」
 ルミもコンパ中の友人に連絡をしていた。あの6人は楽しくやっていたので心配ないだろう。
 それよりも、僕はこれからの会話に期待と怖さを感じていた。僕はただただルミに謝りたかった。




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