自作小説9月/月「月の子」
- カテゴリ:自作小説
- 2010/09/01 17:39:17
月が赤く染まる。月が開く合図だ。
新歴14年。地球での人間の繁栄と堕落を神は見放したのだろうか。
21年前、隕石が地球に落ち混乱と破壊の中でわずかな人間を残し、人類は滅亡したのだ。
しかし、人類も手をこまねいていたわけではない。
滅亡を阻止するために月にシェルターを作り、受精卵を送り込んだのだ。
人間は一切月に行かなかった。誰がいくのかで、もめている時間的余裕などなかったから。人類は地球と運命をともにすることに決めたのだ。
それから21年後。シェルターでまっさらな状態で育った「月の子」の第3陣を乗せたロケットが地球に戻ってくる予定は中止になった。シェルターから出た彼らは月の基地施設で「月の住人」として、今後生きていくことになるのだ。
3年前。第1陣で地球に戻った月の子は、破壊された地上を復興しつつ待ちわびていた人とともに暮らすことはなかった。純粋培養で育った「月の子」は帰還用シェルターの中から出てくるのを拒み、月への帰還を要求した。しかし話し合いに決着がつく前にシェルター内で発生した謎の感染症で全滅してしまったのだ。そして、第二陣も同じ運命をたどった。
隕石がぶつかる前、繁栄の絶頂と恐怖と混乱の中、隕石衝突の対策で世界がひとつになって月に未来を託すプロジェクトに参加していた親を見ていた「大地」はわずか5歳で親を失い、破壊された地球を生き抜いてきた。科学の栄華を極めた時代の記憶は、現実とのギャップの中で大地を苦しめ続けた。苦しみながら、しかし彼は生に執着した。
第1陣の「月の子」がシェルターから降りるのを拒否した気持ちは少しは理解できた。しかし、「月へ帰りたい」という言葉が大地の心をえぐった。「月の子」の故郷はすでに「月」なのだろうか?
こんなに破壊されたけれど、それでもここは「月の子」にとっても故郷ではないのだろうか?ここで親を失い、多くの犠牲者と生き残ったサバイバルな生活の中で、それでも大地は地球を愛していることを、そのとき、はっきり認識したのだった。
月を見上げていると、後ろからそっと「月子」が手を握った。青白くて細いからだだが、これでも随分たくましくなったのだ。彼女の正式名称は「NC1-10499」。月から来た「月の子」第一陣の一人だ。彼女は地球到着後、シェルターの中で起きた感染症の混乱の中でたった一人で脱出し、たまたまシェルターの警護をしていた「大地」がこっそりかくまったのだ。3年前の話だ。彼女がなぜ感染しなかったのか?彼女の存在がわかれば研究機関に送られるだろう。彼女をかくまうことが彼女の幸せなのか、大地にはわからなかった。でも彼女は大地のもとから脱出することはなかった。その後、隕石でできた無数の穴の一つの中から救出したと偽り、かくまうのでなく、正式に共同生活を始めたのだ。「月子」という名は彼女が自らつけた。大地の顔が少しゆがんだのを見て月子が言った。
「月に未練はないの。でもあなたが今ここにいるのにたどってきた過去があるように、私にもたどってきた過去がある。過去があるから未来もあることを忘れたくない」
毎年1回月のシェルターが開き、「月の子」は月の住人としてこれから、新たな未来を創造していくのだろう。
人間は、「地球人」と「月の住人」に結果的に別れてしまった。
「君は故郷が恋しくならない?」
大地は月を見上げながら月子に訊く。彼女は少し首をかしげ、お腹をやさしくなでながらささやいた。
「月はいつでも私を見てくれている。それに…」
「私たちの子は地球とか月とか関係ないただの人間の子だわ」
大地は月子を抱き寄せ、二人は赤く染まった月を見上げた。
月でも同じように地球を見てる人がいるだろうか?大地は心の中にその想いをしまいこんだ
(終わり)
読んでくださって感謝です。
宇宙物のSFは、すごく苦手なんですが、月で思い浮かんだのが
この話の骨格でした。おそらく「2012」のDVDの影響を相当
受けてる気が自分でもします(--;。
お話の最後は、ハッピーエンドとまではいかなくても
どちらかというと希望が見える形で終わりたい傾向が強いです。
それでも宇宙物書いたのは勉強になった気がします。
シーラさん、いつも読んでくれてコメくださって感謝です。
やっぱいんこの話の方が書きたいんですが、月といんこは
つながらなかったです(^^;
自分が帰っていい場所の一つで、なかなか捨てられるものではありません。
月と地球。離れた場所で暮らす人類。今後を思うと切なくなりますね。
悲しみを含んでいるようで明るい未来も含んでいる。
例えどんなに世界が変わってもそこは変わらなく、持ち続けるものなのだろうな。と、考えながら読ませていただきました。
神秘的だけど、暖かいとても素敵な小説だと思います。
2人の子供の未来が明るくなりますように★=
不思議で、悲しくて、でもあたたかい、とてもステキなお話だと思います(^^)
彼らと生まれてくる子どもの未来が明るいものであることを願います…!!
急ぎ足でごめんなさい。
私もそうですけれえど
基本、いんこのお話書いているので、今回はひらめいた瞬間から
勢いだけで書いたものです、あちこちボロボロ~~~(--;
↑まろは、長文はコピーして持ち帰り、後でゆっくり読むのです。
最後の月子の文句がよいですねぇ〜。
月子さぁ〜ん〜 おぉぉぉぉぉ〜〜〜(ToT)
それで月が開いたら何が出るかな?ってかんじで3時間ほどで
書きました。SFの焼き直しって感じですが、これが限界でしたorz。
トシraudさん、オウムやいんこ出すと話が複雑になって
短編しかかけない私は、短編をつなげる連載になっちゃいそうです(^^;
いんこやオウムのお話は過酷な状況で出したくないなぁってのも
あって。なんか お話の中でも、ほんわか幸せでいて欲しいなぁって
BENクーさん、感想感謝です。実は短編しかかけない人間です
短い中で上手にストーリーをまとめられているのに感心しました!
それはともかく、なんだかいろんな想像を抱かせるお話ですね。脇でついてるテレビで、ハマスが西岸入植地のユダヤ人殺害をやっていたけど、パレスチナ・イスラエルにもなぞらえるの可能みたいな。。。