Nicotto Town



母のあまやかし

幼すぎて何歳だったか記憶はさだかでないが、
たぶん45歳の頃だと思う。
ボクは、とにかく歯医者が、大嫌いだった。
(まぁ、好きな人はいないと思うが。)
キーという音を立て、歯の神経に触れたときの過去の痛みが、
妄想に妄想を重ね
ボクの心をその恐怖が完全に支配していたのだ。
しかし、甘いものが、好きなボクは、虫歯がひどかった。
痛い、痛いと、うったえていながら、
歯医者に連れて行くとなると、
わんわん泣き叫ぶのである。
ホント、自分のことながら、どうしようもないガキである。
自業自得さ、はぁ、はぁ、はぁ、で、ある。 

ところが、母がとる行動が、びっくり仰天なのだ。
病院前で、泣き叫ぶボクに、
「歯医者いったら、あめちゃん、あげるから。」
歯医者をいやがる虫歯の子供を、虫歯の諸悪の根源である、
あめ玉で
つろうという作戦なのである。
なんじゃ、そりゃ。
アホなボクは、その言葉に、ひくひくしながら、
「ほんま?。」と、泣きやむ。
さらにこのアホは調子に乗り。
「行く前に、1個ほしい。」と、甘える。
救いようのないアホである。
「ほんましょうがないなぁ、1個だけやで。あー。」
おいおいおい、なにしてんねん、と、
今のボクなら、
おもいっきりつこんでいるところである。
せめてそこは母親なら、終わってからと子供を抑制させる
ところではないのか。
 

そして、「あー。」と、ボクは、直立不動で口を開け、
母にあめ玉を口に
入れてもらうのである。
まさに、これがホントのThe!甘やかしだ。

 これが、ボクの小さな頃の母の記憶である。
それ以前も、それ以降も、
忙しい縫製の仕事をしていた母との
思い出はない。
小学生になってからも、運動会も、参観日も、
忙しくて、一度も来ることはなかった。
子供に接することがなかった母のこの行動は、
仕方なかったのだろう。
 

「あーして。」「あー。」は、
もしかすると、ボクが、母親に甘えることができた
たったひとつの記憶なのかもしれない。

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2010/08/24 01:12
ペグペグさん、ありがとうございます。

この甘やかしのブログは、母のおもしろさに、コメントしていただいたことで触発され、

調子にのって、続けて書いてしまった経緯があります。あわせてコメントしていただいて、

感激です。

人間の記憶は、素敵なものを残す機能が、あるとききます。

ボクも、仕事でかまってくれなかったことで寂しいと思った母の記憶は、ある意味ないに等しく、

むしろ、このように、数回しかなかった素敵な思い出を残してるんですね。

きっと、ぺぐぺぐさんのお子さんは、素敵な記憶を、ボクなんかより

いっぱい残していくんだと思いますよ。
アバター
2010/08/23 22:42
忙しくしていたお母さんを見て育ったからこそ
のブログですね^^
すごく素敵で色々考えさせられますね^^
私の息子がいずれ母の記憶としてどんな事を
思い出してくれるのかちょっと不安です。



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