Nicotto Town


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北の少年 砂海編 46

このお話は、友人のリクエストにより、篠原烏童さんの作品から共生獣の設定をお借りしています。ファンの方で不快に思われましたら、お詫びいたします。

長文なので嫌なんです~の方はスルー推奨^^;



「いいさ、気にすんな」
ラルムは励ますようにジェンに笑いかけ、軽く肩をたたいて彼女の様子を伺った。
「いや、八つ当たりだ。ほんとにすまない…大丈夫か?」
「鍛えてるからな。あんたに目一杯呑まれる方が、よっぽど堪えるさ」
ラルムの軽口に、ジェンはやっと微笑みらしきものを口の端に浮かべた。
「なあ、ラルム」
ジェンは改まった口調で、まっすぐにラルムの顔を見つめてきた。
先ほどまで鋼のようだった瞳は、今は暗く翳っている。
「狼の死骸はほんとに焼くしかないんだな」
「ああ、郷に入っては郷に従え。とくに砂海の住人は、魔を忌み嫌うから。俺たちは要らぬ争いは避けなければばらない」
「そうだな」
「…今日は忙しい日だよ。まったく」
もう一度励ますように彼女の肩をたたいて、ラルムはケニスのいる建物の方へ歩いていった。
ジェンはその後ろ姿にもう一度頭を下げると、ロヴとカイルがいる建物の方へ向かった。

薄暗い部屋の中で、黒衣の魔法使いは掌にのせた小さな水晶珠を眺めていた。
高価な地模様のある絹の長衣を纏った、まだ若い魔法使いだ。
赤毛で灰色の目をしており、端正な顔立ちである。
だが今は不愉快そうな表情で、水晶珠を見つめている。
本来なら透明なはずの水晶珠は、中央が灰色にくすんで小さな亀裂が無数に走っている。
少し衝撃を加えただけで、今にも粉々になりそうなほどだ。
「参りましたね。まさか、お前が裏切るとは思いませんでした。自ら死をもって自由になるとはね」
長く伸びた前髪を煩げにかき上げ、魔法使いは小さく呟いた。
その口調はひやりとするような響きを帯びていた。
掌の水晶珠を軽く握りしめると、それは崩れ去るように形を失ってしまった。
彼の指の間から、砂のようになった水晶珠の成れの果てが零れ落ちてゆく。
「一年捨て置いたから、精神支配が弱まりましたね」
さも汚らしいものを振り払うように、砂と化した水晶珠の残りを床にばら撒いた。
神経質に両手をこすり合わせ、粉を綺麗に振り払う。
「裏切り者に死は相応しいが、どうせなら我が手で焼き尽くしたかったですね」
魔法使いは立ち上がって、窓辺に近寄った。
夜明けからもうかなりの時間がたっている。
太陽は中天近くに輝き、窓の外は人々の活気で満ち溢れていた。
だが魔法使いの周囲には、ひやりとした冷たい空気が取り巻いている。
彼の周囲だけは、まるで違う時間が流れているかのようだ。
「まあ、ロウ・ヴェインがあれのいたバールオアシスに居るのは間違いない。今度こそ息の根も止められるというものだ」
魔法使いは酷薄な笑みを浮かべて、中空を見据えた。
彼の目には、まだ見ぬ『ロウ・ヴェイン』の姿がはっきり見えている様だった。
「私がこの手で貴方を殺して上げましょう。ロウ・ヴェイン。この、ロウ・バルト自らね。光栄だと思いなさい」
黒衣の魔法使い…ロウ・バルトはそう宣言して哄笑した。
狂気を帯びたその笑いは、何時までも薄暗い部屋にこだましていた。

魔を払うという香木は、油分を多く含んでいるため炎の勢いが強い。
村はずれの砂海に面した風下の広場で、その香木を使って人狼の死骸は荼毘にふされた。
ジェンと目を覚ましたロヴ、ラルムと仲間の傭兵たち、そしてカイルが燃えさかる炎の祭壇をかこんでいる。
バールオアシスの住人たちが遠巻きにするように、その様子を見守っていた。
砂海のぎらつく太陽がその光景を照らし出している。
人狼の死骸は、まるでよく乾燥した藁のようにあっという間に燃え尽きてしまった。
「なんてあっけないんだ」
若い傭兵ルークがそう呟いた。
「そうだな。あれだけの強敵だったのにな」
ラルムがそう答えて、ジェンとロヴの方へ視線をめぐらせた。
2人とも盛んに燃える炎を、瞬きすることなく見つめていた。
その表情には,何かを決意した者に共通した落ち着きが宿っていた。
(あれからどんな話をしたのかな。あの2人は)
ケニスに人狼の死骸の件を報告している間、ジェンはロヴと何かを話し合ったようだ。
ラルムが死骸を焼くための準備を終えた頃には、2人そろって死骸を焼く時に同席してもいいかとク許可を求めてきた。
反対する理由はラルムには無かったので、二つ返事で許可をした。
ジェンは無言で頭を下げ、ロヴは潤んだ瞳でラルムを見つめた。
カイルにいたっては、ラルムの足に頭と体を擦り付けて喉を鳴らしていた。
三者三様の態度で、ラルムに感謝を示したのだ。
一同は炎が燃え尽きるまでその場を動こうとはしなかった。

アバター
2010/10/15 22:11
たかりんさま
元気そうでよかった^^
人狼だから、魔物としておわれただろうね。
人でもなく、狼でもなく孤独に。
それでも何かに心を支配されるよりは、孤高に生きたほうがいいのかもしれないのかなあ。
なんて、考えてしまうなあ。
アバター
2010/10/15 21:53
ロウ・バルトと出会ってなくても、人狼が心穏やかに暮らせていた可能性は低いよね。
悪い奴に利用されていた可能性がやっぱり高い身の上だったかな…と。
…でも中でも最低なヤツに出会っちゃったな~と可愛そうになりました(;_;)

でも、だからこそ最後にジェンやカイルに出会えてよかったね☆
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2010/09/11 18:22
だあくさま
まさしく、でた~~~の巻です。
前髪の長い美形ですが…読み直すとほんと嫌な奴だ^^;
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2010/09/11 15:59
ロウ・バルト でたーーーー!!
前髪が長いんですね・・・ 端正な顔立ちなのに 嫌な感じがよく伝わってきます
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2010/08/16 21:00
シンさま
各キャラにコメントをありがとう^
登場人物にかわって返信をw

ジェン
「しかたがないだろう。青くてわるかったな。私だって怒ることもある!」

ラルム
「いやあ~照れるなあ~。一杯おごろうか?」(懲りないお人や^^l)

私の返信はカイルが代理でw
カイル「えええ~また難しい注文やなあ。こいつの手にあまるんとちゃうかw
    まあ、俺は安生したるわ」

... 鋭意努力いたします。

アバター
2010/08/16 18:37
忙しくてレスできずm(__)m
前回と併せて^^

>ジェン
青い。青いぞ!
そんなんで、赤毛のアンちゃんに勝てるかぁ!!

>ラルム
あんさん、急にイイ男になりましたな^^

ラトさん>
ロウ・バルトは
キルヒアイスの悪役版でどうどすww? 
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2010/08/15 20:10
メリーさま
さあて、悪人始動かなw
私に悪人かけるんかいな^^;
アバター
2010/08/15 18:11
ヤブァイね。
メッチャ続きが気になるね。



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